診療に関すること::内科(消化器内科)
ピロリ菌とその除菌について
(この記事は2013年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
内科 鈴木 俊生 |
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)という名前を、一度くらいは見聞きされた方も多いのではないでしょうか。この西陣病院だよりでも前に話題として取り上げられていました。当時と多少状況が変わったところもあり再度取り上げることといたしました。
ピロリ菌は、発見されてまだ30 年ほどですが様々な病気との関連性が解明されつつあります。その中でもわれわれ日本人が見過ごすわけにはいかないのは胃がんとの関連です。
がんによって亡くなられる方のうち胃がんは、肺がんについで2 番目に多く、年間約5万人の方々が亡くなっておられます。また、年間約10万人の方が新たに胃がんと診断されています。
ピロリ菌が感染した胃は、慢性胃炎の状態を経てがんを発症すると考えられます。そのため、ピロリ菌の感染をなくすこと( 除菌)は即ち胃がんの発症のリスクを減らすことにつながります。
そもそも、ピロリ菌は口から体内に入り感染すると考えられており、衛生状態のよくない地域では感染のリスクは高まります。日本ではほかの先進諸国と比べてピロリ菌感染者の割合が高く、国民の50%(50 歳代以上では80%)が感染しているとみられています。若年世代では感染率は低く、戦後の急速な発展にともない衛生状態が改善されことを如実に反映しているといえるでしょう。
今年はピロリ菌の除菌治療に関して大きな変化がありました。以前から、胃潰瘍、十二指腸潰瘍やそのほかの特定の病気のある方には、ピロリ菌の除菌が保険診療で行われてきました。
しかし、これまではピロリ菌に感染してはいるけれども胃潰瘍や十二指腸潰瘍などのない方にはピロリ菌の除菌は保険診療では行えなかったのです。とうとう今年(2013 年)2 月より、そういう方の除菌治療も保険診療で行うことが可能となりました。
ピロリ菌の感染を確認するためには、血液、尿、便、呼気のいずれかの検査か、胃カメラの際に胃の組織をごく少量採取して調べます。
もし、これらの検査でピロリ菌に感染していることがわかれば除菌されることをお勧めします。
除菌を希望される方で胃カメラを受けておられない方は、除菌に先立って胃カメラ検査を受けていただく必要があります。
除菌の方法は数種類のお薬を7日間飲んでいただくだけです。たくさんのお薬を一度に飲んでいただくことになるため、下痢やアレルギーなどの副作用が現れることがあります。その後、除菌がうまくいったかどうかを先ほどの血液、尿、便、呼気のいずれかの検査で調べます。
この治療で概ね70-80%前後の方々の除菌は成功します。うまくいかなかった方も二回目の除菌治療を受けていただくことができます。
二回目の除菌治療は、一回目とは種類を一部変更した薬を飲んでいただきます。二回目の除菌まで含めると90% 以上の方のピロリ菌の除菌が成功します。ただし、その後もピロリ菌以外が原因の病気の可能性もありますので定期的に胃カメラを受けていただくのが望ましいでしょう。
日頃からおなかの具合がよくないとお感じの方や、胃の痛みがある方など気になる方は一度ピロリ菌の検査を受けてみてはいかがでしょうか。まずは病院に足を運んでみてください。お待ちしております。
| Copyright 2013,11,01, Friday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |