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円錐角膜とハードコンタクトレンズについて

(この記事は2012年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



山岸 景子 眼科 医長 山岸 景子

 円錐角膜とは、角膜の中央部分の厚みが薄くなり、通常は球面である角膜が前方へ円錐状に突出する病気です。症状としては、角膜の強い乱視のため視力が低下します。思春期ごろに発症し、徐々に進行して30歳を過ぎると大抵進行は止まるとされています。原因は今のところ不明ですが、目をこする癖やアトピーのある人に多い傾向にあります。角膜形状検査などで、角膜中央部、もしくは中央よりやや下方の角膜のカーブが急であれば円錐角膜と診断されます。基本治療としてはハードコンタクトレンズ(以下HCL)の装用、円錐角膜が高度に進行してHCLの装用が困難になれば角膜移植です。最近は角膜移植に至るまでの治療として(保険適応外ですが)進行を抑制するためのクロスリンキングという治療や角膜の突出を改善するために角膜内にリングを埋めるという治療が出てきました。

 円錐角膜でHCLを装用する理由は大きく2つです。1つめはHCLによる型押しの要領で角膜突出の進行を(ある程度ですが)抑えてくれるためです。また、2つめはHCLを装用すると眼鏡やSCLに比べて格段に良好な矯正視力が得られるためです。HCLは素材が固いため装用に慣れるまでは異物感が強く、一般の患者様には敬遠されがちです。しかしながらその素材の硬さゆえにHCLと角膜の間に涙が入り、その涙液レンズが角膜の光学面を改善して不正な乱視を矯正して良好な視力が得られるのです。これは円錐角膜に限らず、すべての角膜乱視にあてはまります。

円錐角膜 HCLはその患者様の眼瞼の形、角膜表面の形、瞬目の強さなどによって最適なデザインが異なりますので、当院ではサンコンタクトのカスタムレンズを導入し、レンズのサイズ、ベースカーブ、周辺のデザインを何十種類という中から患者様一人一人に合うように選んでいます。さらに診察時にコンタクトのフィッティングを見ながらHCLに修正を施し、角膜の形状の変化に合わせてHCLを交換して、できるだけ痛くなく、眼への負担も少ないHCLの処方を心がけています。



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認知症とMRI

(この記事は2011年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


山川先生 放射線科 部長 山川 稔隆

 高齢化に伴い、認知症を持つ患者数が増加し、大きな社会問題となっています。認知症はいくつかの病気が原因となって発症する病気ですが、その最も多い原因がアルツハイマー病です。

 アルツハイマー病は大脳の皮質に異常なタンパク質が溜まり、神経細胞が死滅し、脳が徐々に萎縮して発症します。現在、アルツハイマー病を完治させる薬はありませんが、症状の進行を遅らせる薬(アリセプト)があり、効果が期待されています。アルツハイマー病の診断は専門医による問診と、MRIなどにより脳の萎縮を見て判断します。アルツハイマー病の脳萎縮は、側頭葉の海馬(正確には海馬傍回)と呼ばれる場所から萎縮が始まり、徐々に側頭葉→前頭葉と萎縮が広がっていきます。治療効果を高めるには、早期の段階で診断し、内服治療を早く始めることが大切です。アルツハイマー病の早期では、海馬傍回の萎縮も軽いため、MRIの画像から肉眼で海馬傍回の萎縮の程度を判断するのは困難です。この海馬傍回萎縮の判定をコンピュータで行うのがVSRAD(ブイエスラド)です(図1)。

 VSRADは患者様の脳の画像を、正常者の脳の画像の平均と比較し、統計学的な解析を行い、きわめて正確に海馬傍回の萎縮の度合いを数値化してくれます。この数値が2.0以上の場合、アルツハイマー病の可能性が高いといえます。VSRADは造影剤を使用しませんので、造影剤アレルギーや副作用の心配もありません。通常のMRIと同じように検査を受けていただけます。ただ、先ほども述べましたように、アルツハイマー病の診断は画像だけで判定はせず、専門医による問診や診察で総合的に判定されますので、VSRADの数値のみで即断されることの無いようにお願いいたします。


認知症とMRI_図1認知症とMRI_図2
図1図2

 認知症の2大原因はアルツハイマー病と脳血管性認知症(多発脳梗塞による認知症)で、これらは完治が難しい認知症なのですが、治療可能な認知症もあり、その代表が慢性硬膜下血腫と正常圧水頭症です。

 慢性硬膜下血腫(図2)は高齢者が頭をどこかにぶつけて(軽い外傷のことが多く、本人も気づかないほどです)、脳の表面の血管がわずかに傷ついて、脳と頭蓋骨との間にゆっくりと血腫が溜まっていき、脳を圧迫する病気です。認知症や半身麻痺などの症状が徐々に進行していきます。頭蓋骨に小さな穴をあけて血腫を吸い出すと、症状が劇的に改善します。

 正常圧水頭症は、高齢のためや、くも膜下出血や頭部外傷などの後遺症のため、髄液の吸収が悪くなり、脳の中の脳室に髄液が溜まって脳室が拡張し、認知症・歩行障害・尿失禁などの症状をきたしますが、シャント手術を行い、溜まった髄液をうまく逃がしてやることで、症状は改善します。慢性硬膜下血腫にしても正常圧水頭症にしてもMRIで簡単にわかります。

 西陣病院画像診断センターではVSRADを含めた頭部MRI検査を行っております。西陣病院にかかっておられる患者様だけでなく、近隣の診療所に通院されていらっしゃる患者様も、主治医のご依頼があれば当院の画像診断センターでMRI検査を受けていただけます。お心当たりのある症状をお持ちの患者様は主治医の先生とご相談ください。


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外来看護部門の紹介

(この記事は2011年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


伊藤科長 看護部 外来科長 伊藤 良子
外来スタッフ
 私たち外来スタッフは、看護師27名、看護アシスタント2名、視能訓練士1名で、患者様の看護を行なっています。また、内科外来では、医療アシスタントが、医師とともに患者様のお話を聞かせていただき、診療の補助を行なっています。画像診断センターでは、臨床工学技士や放射線技師と連携を取りながら仕事をしております。

内視鏡室
 外来看護師の役割には、様々な診療科の補助に加え、内視鏡を使用した検査や治療、心臓カテーテル法による検査や治療、外来化学療法などの看護があります。また、皮膚排泄ケア認定看護師によるストーマ外来も毎月1回(第1火曜日)実施しております。



 外来看護で、気をつけなければいけないことは、できるだけ患者様をお待たせすることなく、診療や検査を受けていただくことだと考えています。そして、限られた時間の中で、患者様が、心配に思っていることや、困っていることにお答えしたいと考えています。それでも、お待たせすることがあると思います。「遅いな」と感じた際にはスタッフにお声をおかけください。また、家での療養で心配なこと、お困りのことがあれば、スタッフにお声をおかけください。


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認定看護師紹介 -認定看護師の役割-

(この記事は2011年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


 1996年、日本看護協会は、高度化、専門分化が進む医療現場の看護ケアの広がりと、質の向上を図るために、資格認定制度を発足させました。資格を取得するためには、600時間の専門教育を受けたあと、筆記試験に合格しなければなりません。認定看護師には全部で21の専門分野があります。今回は、西陣病院・訪問看護ステーション西陣の2名の認定看護師を紹介いたします。


訪問看護認定看護師 訪問看護ステーション西陣 副主任 市来 香


 訪問看護は病気や障害を持った人が、住み慣れた地域やご家庭で、その人らしく療養生活を送れるように、看護師等が生活の場へ訪問し、看護ケアを提供し、自立への援助を促し、療養生活を支援するサービスです。

 訪問看護師の役割には看護現場における①実践②相談③教育があります。入院期間が短縮化され、在宅医療が重視されるようになってきた現在、今後ますます在宅療養者は、増加すると言われています。しかし、訪問看護の活動や、活動による成果はまだまだ知られていない部分があります。私たちは、在宅療養生活を満足の高いものへと変えていくために、医師や社会福祉士、施設の看護師や、薬剤師、管理栄養士、事務員等と連携し利用者様の療養生活における問題を解決していきます。そして、訪問看護で利用者さまに起こった良い変化を、多くの人に知っていただき、多くに人に訪問看護をご利用いただきたいと考えています。それが、認定看護師の相談・教育の役割を果たすことになると思います。

 在宅療養者の身体の状況や、生活全般が安定するよう「治療」と「生活」の両方の視点をもちコーディネイトできることは看護師の強みです。今は資格を取得したばかりで、まだ、十分な力を発揮できていませんが、多くの方が訪問看護を利用して、我が家で、安心して楽しく暮らしていただけるようにお手伝いしていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


皮膚・排泄ケア 認定看護師 看護部 主任 多氣 真弓


 皮膚・排泄ケア認定看護師は、傷のケア、人工肛門や人工膀胱(ストーマ)のケア、便尿失禁のケアを専門に行う看護師です。認定看護師となって、4年目に入り、現在は専従看護師として、院内を横断的に活動しています。

 「傷のケア」の中で、最も多いのが、褥瘡(床ずれ)です。院内には褥瘡対策委員会が、設置されており、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、社会福祉士と連携をとりながら予防的なケアから治療まで行っています。また、在宅で介護をされている方や施設に入所している方からの相談も受けておりますので、お気軽にご相談下さい。

 「ストーマケア」は、外科や泌尿器科の医師と連携をとりながら、人工肛門、人工膀胱を造設される方に術前からケアを行っています。また、退院後、安心して生活できるようにストーマの専門外来を月1回(第2火曜日、14:00~)、予約制で行っています。

 ストーマ外来では、ケア方法のチェック、ストーマケアに関わる製品の紹介、生活相談などを行っています。

 「失禁ケア」は、排泄物によるスキントラブルのケアや尿道バルーンカテーテルの管理を主に行っています。

 現在の医療の要は、「チーム医療」と「地域連携」と言われています。院内のみならず、地域の医療チームの一員として、専門的な知識や技術の提供ができるようにしていきたいと考えておりますので、皆様、どうぞよろしくお願いします。

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インフルエンザの時期になりました

(この記事は2011年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



薬剤部 部長 三宅 健文

 インフルエンザの薬物療法には、「ノイラミニダーゼ阻害薬」と呼ばれる抗インフルエンザウイルス薬を使う「原因療法」と、症状を和らげるためのくすりを使う「対症療法」があります。

 インフルエンザウイルスに対して、直接的に作用する抗ウイルス薬が使用されるようになりました。従来の対症療法とは本質が違い、ウイルスの増殖を抑え、症状の重症化や長期化を食い止めることができます。抗ウイルス薬には、ドライシロップや吸入薬、経口薬があります。

 インフルエンザウイルスは増殖のスピードが速いため(24時間で100万倍に増えます)、症状が出現して48時間以内にウイルスの増殖のピークがきます。このため、48時間以内に服用しないと“くすりの効果”が現れにくくなります。

 また対症療法では、高熱の場合には解熱鎮痛薬(熱を下げるお薬)を、黄色痰(たん)など細菌の二次感染が疑われる場合には、抗菌薬(細菌を殺すお薬)を使います。

 薬を服用することで、高熱や体の痛みを緩和することができますが、高熱や体の痛みを緩和できても、インフルエンザウイルスに対する直接的な効果はありません。インフルエンザの治療に抗菌薬による薬物治療が処方される場合がありますが、解熱鎮痛剤と同じで、インフルエンザウイルスに直接作用するものではありません。

手洗いうがい インフルエンザにかからないためには、まずきちんとした予防対策をとる必要があります。室内の換気を良くして、室内の湿度を保つために加湿器を設置するなど、室内の空気環境にも配慮が必要です。インフルエンザウイルスは、くしゃみや咳によって感染する可能性があります。鼻水や唾液、咳が手に付着すると、感染するので、うがいや手洗いは必須です。テーブルやドアのノブなど、とくに手に触れる機会が多い場所には、消毒液を用いてこまめに拭き取るなど、室内にある物にもインフルエンザの予防対策が必要です。とくに、インフルエンザが流行する時期には、このような配慮が必要不可欠となります。


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