(この記事は2013年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
| 神経内科 中島 健二 |
まだ医学が発達しておらず、衛生思想が充分ではなかった時代には多くの人がコレラやペスト、結核などといった伝染病や感染症で亡くなりました。
現在、日本での死亡率の1位は癌、2 位は心臓病、3 位は脳卒中ですが、このように現在では個人の病気が医療の対象になっています。しかし、エイズや鳥インフルエンザのような感染症が私たちの生活の中に忍び寄り襲いかかることがあります。
高齢化という社会現象も医療に大きな影響を与えています。年を取るにつれ増えてくる病気の代表例は脳卒中(脳梗塞や脳出血など)、認知症、パーキンソン病などです。これらの病気はいずれも老化と密接な関係があります。「ヒトは血管とともに老いる」はカナダ・マギール大学の内科教授であったウイリアム・オスラーの言葉と伝えられていますが、確かに血管は年齢とともにぼろぼろになります。その結果が、脳であれば脳卒中として表れるのです。脳卒中は手足のマヒを生じることが多いのですが、発病後数ヶ月から数年で判断力や記憶力が低下し、認知症と診断されることがあります。これを脳卒中後認知症あるいは血管性認知症と呼びます。このほか脳の神経細胞そのものが急速に劣化すれば認知症やパーキンソン病などを引き起こします。
日本は戦後目覚しい経済復興を遂げ、医療も食生活も向上しました。また病気になる前に防ごうという予防医学の進歩もあり、その結果、脳卒中後認知症も減り、現在は認知症といえばアルツハイマー病といわれるほどになりました。生活様式だけでなく認知症も欧米化したのです。
さて神経内科が担当している主な病気は上に示した脳卒中、認知症(アルツハイマー病、血管性認知症)、パーキンソン病などですが、このほか各種の頭痛(片頭痛、筋緊張性頭痛など)、筋肉の炎症(筋炎)、脊髄疾患、末梢神経疾患などがあります。私は海外に行くことが多いのですが、旅先で一般の人と話しをすることがあります。たまたま仕事の話になると、「オー・ドクター。何のドクター?」と必ず聞かれます。その時は、「ニューロロジー(神経内科)」と答えたあとで、まず両手で頭を押さえ、次に両手を背中に回して上から下までおろし、次いで上腕や太腿を掴みながら「ブレイン(脳)、スパイナル・コード(脊髄)、マッスル(筋)、アンド ナーヴ(神経)」と補足するようにしています。ほとんどの方が“ Oh, I see” と返事をしてくれるところを見ると、どんな病気を診ているのか理解してくれたのでしょう。
さて、西陣病院は内科、外科、泌尿器科など多くの科がありますが、ドクター同士のコミュニケーションが抜群によいのが特長です。その上、この病院にはすばらしい画像診断センターがあります。放射線検査技師による迅速な検査と放射線専門医による的確な診断で各科の診療内容は格段に向上しています。
西陣病院では現在、神経内科医が3 名います。全員非常勤なので外来診察のみを受け持っています。近隣でご開業の先生方のご紹介を歓迎いたします。診察の結果は速やかにご報告いたします。また、より専門的な検査や入院治療が必要と判断した場合、関連機関である京都府立医科大学附属病院をはじめ、入院設備のある近隣の病院に紹介をさせていただきます。
「ブレイン(脳)、スパイナル・コード(脊髄)、マッスル(筋)、アンド ナーヴ(神経)」と思われる患者様は、是非いちど西陣病院神経内科を訪ねてください。