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くすりのおはなし -花粉症の季節がやってきました-

(この記事は2013年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


花粉
森本 卓志 薬剤部 主任 森本 卓志


◆今年の花粉の傾向は?

 5人に1人が悩むという花粉症。ウェザーニューズによると、今年の花粉の飛散開始は、昨シーズンよりもやや早く、2月中旬ごろとなるそうです。近畿地方でも、この「西陣病院だより」を読んでいる頃には、もう花粉症シーズンが始まっているかもしれませんね。また、今年は花粉の飛散量が多い年にあたり、昨年の1.6 倍、平年の0.9 ~ 1.4 倍となる見通しとのことです。花粉症の人にとってはつらいシーズンになりそうです。


◆花粉症のくすり

ポイントは先手必勝!早めの対処がその後のカギを握っています。花粉症のくすりをのむタイミングとして花粉が飛び始める2 週間前、可能なら3~4週間前までに行うのが理想的です。これは多くの抗アレルギー薬は遅効性で、即効性が期待できない場合が多いからです。
 くすりの種類は、市販薬と処方薬(病院でもらえるくすり)に分かれますが、最近では従来病院でしかもらえなかったくすりが市販薬として売られています。効果や副作用(眠気や口渇など)はくすりによって、個々によって程度が変わってきます。また、副作用を最小限に抑えるために点鼻薬や点眼薬を使用することも効果的です。医師や薬剤師に相談しながら自分に合ったくすりをみつけましょう。


主な花粉症ののみぐすり
花粉症ののみぐすり
同じ行に記載されているくすりは成分が同じです。含有量は違うものがあります。


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神経内科って、どんな科?

(この記事は2013年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



中島 健二 神経内科 中島 健二


 まだ医学が発達しておらず、衛生思想が充分ではなかった時代には多くの人がコレラやペスト、結核などといった伝染病や感染症で亡くなりました。

 現在、日本での死亡率の1位は癌、2 位は心臓病、3 位は脳卒中ですが、このように現在では個人の病気が医療の対象になっています。しかし、エイズや鳥インフルエンザのような感染症が私たちの生活の中に忍び寄り襲いかかることがあります。

 高齢化という社会現象も医療に大きな影響を与えています。年を取るにつれ増えてくる病気の代表例は脳卒中(脳梗塞や脳出血など)、認知症、パーキンソン病などです。これらの病気はいずれも老化と密接な関係があります。「ヒトは血管とともに老いる」はカナダ・マギール大学の内科教授であったウイリアム・オスラーの言葉と伝えられていますが、確かに血管は年齢とともにぼろぼろになります。その結果が、脳であれば脳卒中として表れるのです。脳卒中は手足のマヒを生じることが多いのですが、発病後数ヶ月から数年で判断力や記憶力が低下し、認知症と診断されることがあります。これを脳卒中後認知症あるいは血管性認知症と呼びます。このほか脳の神経細胞そのものが急速に劣化すれば認知症やパーキンソン病などを引き起こします。

 日本は戦後目覚しい経済復興を遂げ、医療も食生活も向上しました。また病気になる前に防ごうという予防医学の進歩もあり、その結果、脳卒中後認知症も減り、現在は認知症といえばアルツハイマー病といわれるほどになりました。生活様式だけでなく認知症も欧米化したのです。

 さて神経内科が担当している主な病気は上に示した脳卒中、認知症(アルツハイマー病、血管性認知症)、パーキンソン病などですが、このほか各種の頭痛(片頭痛、筋緊張性頭痛など)、筋肉の炎症(筋炎)、脊髄疾患、末梢神経疾患などがあります。私は海外に行くことが多いのですが、旅先で一般の人と話しをすることがあります。たまたま仕事の話になると、「オー・ドクター。何のドクター?」と必ず聞かれます。その時は、「ニューロロジー(神経内科)」と答えたあとで、まず両手で頭を押さえ、次に両手を背中に回して上から下までおろし、次いで上腕や太腿を掴みながら「ブレイン(脳)、スパイナル・コード(脊髄)、マッスル(筋)、アンド ナーヴ(神経)」と補足するようにしています。ほとんどの方が“ Oh, I see” と返事をしてくれるところを見ると、どんな病気を診ているのか理解してくれたのでしょう。

 さて、西陣病院は内科、外科、泌尿器科など多くの科がありますが、ドクター同士のコミュニケーションが抜群によいのが特長です。その上、この病院にはすばらしい画像診断センターがあります。放射線検査技師による迅速な検査と放射線専門医による的確な診断で各科の診療内容は格段に向上しています。

 西陣病院では現在、神経内科医が3 名います。全員非常勤なので外来診察のみを受け持っています。近隣でご開業の先生方のご紹介を歓迎いたします。診察の結果は速やかにご報告いたします。また、より専門的な検査や入院治療が必要と判断した場合、関連機関である京都府立医科大学附属病院をはじめ、入院設備のある近隣の病院に紹介をさせていただきます。
 「ブレイン(脳)、スパイナル・コード(脊髄)、マッスル(筋)、アンド ナーヴ(神経)」と思われる患者様は、是非いちど西陣病院神経内科を訪ねてください。

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ニシジンオリジナルの単孔式腹腔鏡下手術

(この記事は2013年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



髙木 剛 外科 副部長 髙木 剛


 消化器外科領域における手術方法には、近頃さまざまな選択肢を持つことができるようになりました。元々、手術はお腹を大きく開けておこなう開腹手術でしたが、徐々に腹腔鏡下手術という、われわれの目にかわるカメラ(スコープ)と更にわれわれの手にかわる鉗子をお腹に入れて行う手術が一般化されつつあります。その腹腔鏡下手術も近年では、ロボットを用いた手術や今回のテーマである単孔式腹腔鏡下手術といった更に進化した手術が話題となっております。

 単孔式腹腔鏡下手術とは、字のごとく腹腔鏡下手術のなかでも一つの孔から手術を行ってしまうといった手術であります。これによる最大の利点は、整容性であります。臍のくぼみの中に切開を置き、そこから腹腔鏡下手術を行います。術後のキズは目立たなくなり、虫垂炎(俗称:盲腸)や胆嚢炎・胆石症に対してであれば、一見手術を行っていないのではないかと見違えるほどです。

 ただ、単孔式腹腔鏡下手術はいいことばかりではありません。短所としては、整容性を求めた代償として手術の難易度が高まります。また、単孔式手術専用の器具が必要となります。このような負担を少しでも軽減させて、この単孔式手術が安全にそして負担なくできるよう、株式会社八光(本社:長野)と共同開発して単孔式手術器具を作製しました。

EZアクセスポート
単孔式腹腔鏡下手術

 その器具は『E・Zアクセス』(いーじーあくせす)〈写真〉といい、この日本から初めての単孔式手術器具であります。現在、北海道から沖縄まで日本中の多くの施設で使用して頂いております。外科系(消化器外科・婦人科・泌尿器科・小児外科)の学会や単孔式手術を検討する単孔式内視鏡手術研究会でも、この『E・Zアクセス』を用いた手術の発表が非常に多くなされるようになりました。簡便でありまた廉価な本器具を使用して手術を行うことで、安定した手術が可能となり、医療費の削減にも貢献できていると考えております。

 現在のところ、当院での単孔式腹腔鏡下手術の対象となるのは、虫垂炎、胆嚢炎・胆嚢結石症、鼡径ヘルニア、腸閉塞、大腸腫瘍(大腸癌は一部の部位にかぎり)といったところです。安全・確実に行えてこその手術でありますので、まだこのように制限をかけて行っております。しかし、近い将来にはロボット手術など新しいテクノロジーとの融合にて新しい単孔式腹腔鏡下手術が生まれ、適応も拡大していく可能性もあると考えております。


毎日新聞 2010年10月8日付 京都版 きょうの療より 

 単孔式が困難な場合や適応外の場合も今まで通りではなく、複数の鉗子を挿入するためのキズを減らし、臓器摘出するための切開創を臍にすることで、術後のキズを少なくかつ小さくし痛みの軽減に繋がるよう図っています。

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糖尿病の「診断」や「治療」「合併症」について

(この記事は2013年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科 富永 真澄


◆どんな病気?

 糖尿病は、血糖値の高い状態が続く病気です。初期には自覚症状がありませんが、放置すると、血管や神経が障害され、腎臓、目、神経などに合併症をひきおこします。



◆原因は?

 血糖値は、健康な場合はインスリンの働きで一定の範囲に保たれますが、インスリンの分泌量が減ったり、インスリンの効きが悪くなると血糖値の高い状態が続くようになります。(インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンで、インスリンの働きによって血液中のブドウ糖が筋肉や肝臓にとりこまれて血糖値が下がる)



◆診断は?

血糖値
空腹時血糖値126mg/dl 以上
ブドウ糖負荷後2時間値200mg/dl 以上
随時血糖値200mg/dl 以上

 上記の血糖値のどれかにあてはまり、かつHbA1c(NGSP):グリコヘモグロビンが6.5% 以上の場合に診断されます。
 血糖値かHbA1cのどちらか一方だけがあてはまる場合には再検査をして、その結果を加えて診断します。(HbA1c:グリコヘモグロビンとは、過去1~2カ月の血糖の状態がわかる。正常では6.2%未満)


◆治療

 まず、食事療法や運動療法を行い、それだけで血糖コントロールが不十分な場合はのみ薬やインスリン注射などの薬物療法が必要となります。2009 年にインクレチン関連薬という新しいタイプののみ薬や注射が登場しました。食後の高血糖をおさえる、膵臓の保護作用があるなどの特徴に加えて、他の糖尿病治療薬と組み合わせることで良好な血糖コントロールを得られることがあり、治療のはばがひろがっています。

 糖尿病は、発症していても初期には何も症状がありません。そのために長年ほうってしまい、知らない間に合併症が進んでしまうことも少なくありません。血糖値が高いといわれたけれど自覚症状はない、ということが糖尿病の治療を難しくしているともいえます。けれども、何年も血糖値が高いままにしておくとさまざまな合併症が出てきます。合併症にはさまざまな深刻な症状があり、ひとたび進んでしまうと進行をくいとめることはできても元にもどすことはなかなか困難です。

 糖尿病を治療する目的は、この合併症をふせぐことにあります。そのためには、十分に血糖値を下げること、具体的にはHbA1c(NGSP)を6.9%未満にすることを目指します。



◆合併症について

 血糖値が高い状態が長く続くと、全身の血管や臓器が少しずつ障害され、いろいろな合併症があらわれます。細い血管が障害されておこる神経障害、網膜症、腎症は3 大合併症とよばれています。
 個人差はありますが、3 つの合併症の中では、神経障害が比較的早期より自覚され、糖尿病を発症して5~10 年で約3 割にみられるとされています。具体的には、手先、足先のしびれや痛み、感覚がにぶくなる、立ちくらみ、下痢や便秘を繰り返すなどさまざまな全身症状があげられます。
 網膜症は、おおむね10~14 年で半数近くに発症するとされています。網膜の血管障害は自覚症状がないままに進行していきます。かなり進んだ状態になってはじめて、視力低下や目のかすみ、視野の欠損などの視覚障害があらわれてきます。症状がなくても定期的に眼科を受診することが何より大切です。
 腎症は、糖尿病を5~15 年間わずらっている人の1/3 がかかるといわれています。尿検査で、尿アルブミンが陽性になると腎臓の合併症がはじまっていることを意味します。このとき自覚症状はありません。糖尿病しかし、腎症が進まないようにこの時期から糖尿病食ではなく腎臓食にきりかえることが理想的です。最近、早期腎症に対するアプローチが注目されるようになっています。当院では、月曜日・木曜日にスタッフによる「糖尿病透析予防指導」を行っていますので希望があればご相談ください。




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アルツハイマー型認知症の治療薬について

(この記事は2012年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


薬剤師 安藤 典子


 認知症は65才以上の10人に1人が発症すると言われ、その中でもアルツハイマー型認知症の患者数は年々増加傾向にあります。アルツハイマー型認知症は、βアミロイド蛋白が脳の神経細胞に蓄積することにより神経細胞が破壊され、脳が萎縮し、脳機能が低下する疾患です。根本的な治療法はないものの近年新薬が次々と発売されており、治療の幅が広がっています。
 ドネペジル(商品名アリセプト)は最も古くから用いられている薬です。副作用に食欲不振、興奮、幻覚が報告されています。特に服用開始時は副作用が出やすいので注意が必要です。

 メマンチン(メマリー)は昨年使用できるようになった薬です。副作用に頭痛、めまいが報告されており、もともとめまいがある人は注意が必要です。アリセプトとメマリーを併用した方がよいとの報告もあります。

 ガランタミン(レミニール)も新しい薬で、主な副作用は吐き気、嘔吐です。

 リバスチグミン(イクセロンパッチ、リバスタッチ)は貼り薬です。副作用はかぶれ、吐き気ですが、吐き気は他剤に比べて軽減されているようです。いずれの薬も無治療なら1~ 2年で進む症状悪化のスピードを3年ほどに遅らせることができると言われています。しかし薬の効果には個人差があり、早い段階で治療を開始するほど効果が高いことも分かっています。

 何度も同じ事を言ったり聞いたりする、家事や仕事の段取りが上手く出来なくなる等の症状がみられたら、すぐに医師の診察を受け、早期治療を行うことが重要です。


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