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CKD外来へようこそ

(この記事は2014年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


 腎臓・泌尿器科 尾崎 慎司
 昨年の4月より前任者から引き継いで毎週金曜日にCKD(Chronic Kidney Disease、慢性腎臓病)診療を行っております。CKDなんて聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は非常に身近な病気で、日本全国で約1,3 3 0万人(2005年)の患者さんがいるといわれており、だいたい10人に1人はこの病気に罹っていることになります。CKDの診断としては①蛋白尿、②糸球体濾過量(GFR)が60ml/分/1.73㎡未満、のいずれかが3ヶ月以上持続する方、となります。

 CKDは初期には全くといっていい程自覚症状が無く、だんだん病状が進行していくため気付いた時にはかなり病状が進んでいる、といったことがよく見かけられます。CKDを発症すると将来透析治療が必要になる可能性が高くなる以外にも、CKDであること自体が脳卒中、心筋梗塞などの発症リスクを3~4倍程度上昇させると指摘されており、これらの合併症を防ぐ為にもいかにCKDにならないか、また悪化させないかが非常に重要です。

 CKDの原因は高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙、肥満、腎疾患、加齢など様々ですが、その内の加齢、いくつかの腎疾患以外は治療可能なものがほとんどです。またCKDになると高血圧等の症状が悪化することが言われており、悪化した高血圧が腎機能をさらに低下させるという悪循環に陥りますので、早期介入、早期治療による病状進行を食い止めることが大事となっております。また全ての尿蛋白が異常というわけではありませんが、持続的に尿蛋白が多い方も腎機能低下のリスクとなり得ます。

 CKDガイドラインでは、上記①~③いずれかに当てはまる場合、今後の腎機能低下リスクがより高まりますので、専門医による指導・管理が望ましいとされております。

 当外来ではCKDの患者さんに、血液検査、検尿等の一般的検査以外にも、管理栄養士による腎臓に負担の少ない食事、栄養、調理法などを外来で指導しております。またより深く慢性腎臓病について知りたい、自分の病状を知りたいという方には3 泊4日の腎臓病教育入院プログラムでより詳しく精査、指導を行っており、CKDに対する理解を深めて頂きます。

 自分の採血、検尿結果で気になる結果がある方は、かかりつけ・主治医の先生に相談の上、当外来へお気軽にお越し下さい。

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腎尿管結石に対する治療

(この記事は2011年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


今田先生 腎臓・泌尿器科 部長 今田 直樹

ESWL(体外衝撃波結石破砕術)と
f-TUL(軟性尿管鏡を用いたレーザー治療:経尿道的結石砕石術)


 西陣病院は1988年2月に京都府内でも2番目に早くESWL装置を導入し結石治療に従事してきました。ESWLとは超音波およびレントゲンで結石に衝撃波の焦点を合わせて、文字通り身体の外側から衝撃波を当てることで結石を破砕する方法です。
 現在では尿路結石の治療の第一選択として広く行われています。当院では月曜日から金曜日の午後にESWLを施行しています。基本的には他病院と違い外来で行なっております。もちろん入院治療ご希望の方に対しては入院対応しております。京都府立医科大学、京都第二赤十字病院、京都第一赤十字病院の泌尿器科からも外来治療希望の患者様を多く紹介していただいています。結石治療に力を注いでいる当院としてはESWL装置を2011年3月に最新機種モデルに新調しました。更に治療時間の短縮と治療効果の増強を図っております。

1988年 2月エダップ社 ESWL装置 初期モデル
1997年 1月エダップ社 ESWL装置 LT-01
2011年 3月エダップ社 ESWL装置 ソノリスアイシス
 しかしながら全ての結石がESWLで完砕できるわけではありません。ESWLでは細かく破砕された結石が体外に排出されるまでに疼痛や発熱などの症状を呈することもあります。また結石が破砕されない症例や結石が完全に排出されないこともあります。そのような症例に対しては以前より硬性尿管鏡を使い超音波の振動で結石を破砕する装置や、まさに削岩機のように結石を破砕する装置を用いてTUL(経尿道的尿管結石砕石術)を施行してきました。その手術法が最近、特に2~3年の間に劇的に変化を遂げました。尿管鏡が硬性から軟性に変わったことと、結石を破砕する専用のレーザー装置が出現したことによって、TULによる結石の破砕と摘出の安全性と確実性が一段と向上しました。最新の軟性尿管鏡とレーザー(ホルミウムレーザー)を組み合わせた軟性尿管鏡下経尿道的尿管結石破砕術(f-TUL)がそれです。この手技で腎臓・尿管・膀胱と全ての尿路結石に対して治療が可能となりました。f-TULは入院し麻酔をかけた状態で尿管鏡を挿入して、結石をモニターで見ながら破砕する方法です。直接見ながら行うので破砕効果を確認でき、また同時に破砕した結石を直接体外に取り出すことができます。当院では2010年5月よりレーザー結石破砕装置を設備し本格的に開始しておりますが、安全かつ確実に砕石および排石を施行しており、良好な成績をおさめております。
 尿路結石に対してESWLとf-TULを上手に組み合わせることでより良き医療を提供出来ると考えております。最後に結石破砕装置のラインアップを示します。

結石破砕装置のラインアップ
1987年 10月ウルフ社超音波尿路結石破砕装置
1993年 9月アロカ社超音波尿路結石破砕装置 ソノップ
1998年 6月ボストン社結石破砕装置 リソクラスト
2010年 5月ニーク社レーザー結石破砕装置
※「ESWL」は「Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy」の略
※「f-TUL」は「FlexbileScope-Transurethral Ureterolithotripsy」の略
写真はすべて、エダップ社 ESWL装置 ソノリスアイシス

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心腎疾患 -腎臓と心臓の関係について-

(この記事は2011年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


小山先生 腎臓・泌尿器科 医長 小山 正樹

 さまざまな原因で腎臓の働きが徐々に悪くなる病気を慢性腎臓病(CKD)といい、日本では、成人の25人に1人は慢性腎臓病の疑いがあると言われています。腎臓病が進行すると末腎不全へと進行し、透析治療が必要となります。これまで、慢性腎臓病の終末像は末期腎不全、透析療法であるとみなされていましたが、ところが、透析にいたる前に心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患(CVD)を高率に発症することが判ってきました。慢性腎臓病は、①蛋白尿などの検尿異常、②糸球体濾過率(GFR)60㎖/分/1.73m2と定義されています。慢性腎臓病の患者様は腎機能低下が無い患者様に対して、心血管疾患による死亡リスクは男性で3倍、女性で4倍ものリスクが高まります。

 高血圧、糖尿病、高脂質血症、肥満などのメタボリックシンドローム、喫煙が慢性腎臓病発症の原因ですが、これらは心血管疾患発症の原因でもあります。これらの生活習慣病と加齢が原因となった血管病変が腎臓にきたものが慢性腎臓病でありますし、心臓・脳血管にきたものが心血管疾患であります。ゆえに慢性腎臓病と心血管疾患が密接に関連しています。また、慢性腎臓病の進行とともに貧血、高血圧、カルシウム・リン・カリウムなどの電解質異常、尿毒症物質の増加により、血管内皮機能障害を引き起こし、動脈硬化の進行を認めます。よって慢性腎臓病により、さらに心血管疾患の発症が高まります。

 心血管疾患の予防のためにも慢性腎臓病の積極的な診断および治療が必要になります。慢性腎臓病患者様の高血圧は、食塩感受性であることから、塩分摂取量により大きく変化します。そのため、慢性腎臓病患者様では、高血圧・心血管疾患のためにも塩分摂取量を6g/日以下に制限することが非常に重要であります。血圧は130/80㎜Hg 未満を目標とします。尿蛋白が1g/日以上の場合には、さらに125/75㎜Hg未満まで下げる必要があります。24時間にわたる安定した降圧をめざすためにも、家庭血圧の測定が奨められます。慢性腎臓病治療の食事としては、蛋白制限が挙げられます。蛋白制限により慢性腎臓病の進展を防止することが知られていますので、1日に0.6~0.8g/kg×体重まで制限することが重要です。

 生活習慣としては、喫煙は慢性腎臓病、心血管疾患ともに進行を進めますので、出来る限り禁煙されることをお薦めします。

 心血管疾患を予防するためにも、早期に腎障害を発見し、治療を行うことが非常に重要であります。慢性腎臓病と診断された患者様は心機能の検査、心血管疾患と診断させた患者様は腎機能の精査をお薦めいたします。当院での慢性腎臓病の3泊4日の教育入院では、腎機能のみならず心機能検査も合わせて行っておりますので、こちらを利用していただくことも一考かと思います。心腎疾患

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透析医療のトータルコーディネイトを目指して

(この記事は2011年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



今田先生 透析センター長 今田 直樹

 西陣病院の透析医療は昭和47年(1972年)7月にスタートし37年の長い歴史の中、より良い医療を提供することを目標に走り続けております。

 平成19年8月には、新本館完成に合わせて透析室を2階に集約し透析ベッド数を115床(最大460名)に増設しました。

 平成20年3月には、患者様をご自身の病棟ベッドごと搬送して透析を行うことができる透析病床を8床新設しました。

 平成22年4月には、同一法人の社会福祉法人京都社会事業財団が特別養護老人ホーム舟山庵に隣接した、にしがも透析クリニックを開設しました。

 平成22年9月には、慢性腎臓病(CKD)外来を、CKD初期からのケアとサポートの確立を目指し、医療連携パスと共に立ち上げました。

 西陣病院では腎臓病の初期から保存期・末期腎不全治療、透析療法、最期までのトータルケアを念頭に置き努力しております。

 本年も何卒宜しくお願い申し上げます。

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尿路結石について

(この記事は2011年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


平山先生 腎臓・泌尿器科 医長 平山 きふ

 尿路結石とは、読んで字のごとく『尿路』に石ができる病気です。尿は腎臓で作られ尿管を通過して膀胱に貯留され、尿道から排出されます。この尿の通り道、尿路のどこかに石がつまって尿路結石となります。それぞれ石がつまった位置により腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と分類されます。この病気は食事の影響が非常に大きく、一種の生活習慣病と考えられており、日本でも食生活の欧米化で本症の頻度は増え続けています。なぜ石が出来るのか、原因のはっきりしているものもありますが、およそ8割は原因不明です。2:1以上の割合で男性に多い病気で、疫学調査によると男性の場合は約10人に1人、女性の場合は約25人に1人が一生の間に一度は尿路結石症に罹患する計算になります。いろいろな種類の結石があり、石の成分を調べると発症の手掛かりがつかめることがあるので、再発防止のためにも、自分の結石の分析結果を知っておくことは大変重要となります。

 症状は結石の大きさや存在している場所により異なりますが、疝痛発作と呼ばれる激痛が特徴的です。吐き気を伴うこともあります。尿路の粘膜が結石によって傷ついた場合には血尿が出ることもありますし、膀胱を刺激することにより頻尿や残尿感といった症状がでることもあります。また、結石により尿流の通過障害があると、腎盂腎炎から「敗血症」という怖い病気を誘発することもあります。


治療法

保存療法:
 水分を多量にとり、尿管の蠕動運動を活発にさせることで結石の下降を促します。ほかに、尿酸結石やシスチン結石の場合には、尿をアルカリ性に変える薬などを投与し、結石を溶かす治療を行ないます。

侵襲的療法:
 結石が大きく自然排石が困難な時、激しい痛みがある時等に行ないます。多くの場合では、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)が第一選択となります。これは体外で発生させた衝撃波を体の中にある結石に集め、そのエネルギーで結石を砕くというものです。細かくなった石は尿道より自然に排出されます。ESWL が無効な場合や、解剖学的にESWLが施行しにくい場合等には内視鏡的に結石を取り出します。当院では軟性腎盂尿管鏡とレーザーを用いて、腎結石や尿管結石に対する治療を行っています (f-TUL) 。現在結石に対する開腹手術は稀です。


再発予防

 水分をたっぷり採り、1日2リットル以上の尿量を保つようにしましょう。しかし、アルコールを大量に飲むのでは逆効果です。ほかにカルシウムはしっかり採る、脂肪は控えめにする、野菜・海草・青身の魚を適度に採る、塩分・砂糖は控えめにする等ありますが、一種の生活習慣病であり、食事はバランス良く・規則正しくを心がけ、肥満にならないように注意することが大事です。

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