診療に関すること::内科
関節リウマチについて
(この記事は2014年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
内科 神尾 尚馨 |
関節リウマチというと、関節が変形して治らない病気というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。有名な画家ルノワールも関節リウマチによって手指が変形し、車椅子で生活していたことが知られています。しかし、近年早期診断・早期治療が可能になり、多くの新薬が開発されて、関節リウマチの治療は大きく変化しました。日本におけるリウマチ患者数は一般的に約70 ~ 80万人で、100 ~ 200人に1人が罹患するといわれています。どの年齢の人にも発症しますが、30 ~ 50 代で発症する人が多く、女性は男性の約3 ~ 5倍も高い頻度で発症します。リウマチは、本来外敵と戦うための免疫システムが何らかの原因で自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつと考えられています。免疫細胞が異常に活動して関節内に炎症が引き起こされ、関節の腫れや痛みが生じます。この炎症が続くと骨破壊が起こり、徐々に関節が変形します。免疫異常が起こる原因は現在のところはっきりとはわかっていませんが、最近の研究では遺伝的な素因に加えて喫煙や歯周病が関与していると考えられています。
関節リウマチの診断は診察所見や血液検査、レントゲンなどから総合的に行いますが、早期診断の際に最も重視されるのは関節の腫れと痛みです。血液検査でリウマチ因子が陽性でも関節症状がなければリウマチとは診断されません。手指の第二関節(PIP関節)や指の付け根(MP関節)、手首など、小さな関節が痛むのが特徴で、歩くときに足趾の付け根(MTP関節)が痛むこともあります。同じように関節が腫れて痛む疾患に軟骨が擦り減って起こる変形性関節症があり、手指の第一関節(DIP関節)
の腫れと痛みは変形性関節症であることが多いと考えられています。また変形性関節症では長時間使っていると痛みが強くなるのに対し、関節リウマチでは朝起きた時にこわばりが強く、動かしているうちに楽になってくるのも特徴のひとつです。最近はMRIや超音波などを使用して関節の炎症を画像的に評価することもできるようになってきました。
関節リウマチの治療は、以前は痛みの緩和を目標とした鎮痛薬やステロイドの使用が中心でした。しかし、新薬が開発されたことによって、炎症を抑えて関節破壊の進行を止めることを目標とした治療へと変遷しています。早期からの適切な抗リウマチ薬の使用に加え、日本でもこの10 年ほどの間に生物学的製剤と呼ばれる新しい薬が使えるようになり、炎症や痛みのない「寛解」と呼ばれる状態を目指した治療が行えるようになってきました。日本では現在7 種類の生物学的製剤が承認されており、それぞれの患者さんの病態に合わせた選択ができるようになってきています。またJAK 阻害薬という全く新しいタイプの内服薬も昨年承認されました。病態の解明や新しい薬の開発はこれからさらに進んで行くと期待されています。
このように大きく進歩している関節リウマチの治療ですが、関節リウマチの関節破壊は発症から2年以内に急速に進み、いったん進行すると不可逆的になるため、早期に診断して治療を始めることが重要です。関節の痛みやこわばりを感じたら、早めにご相談頂ければと思います。
| Copyright 2014,03,01, Saturday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |