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閉塞性動脈硬化症(ASO)について

(この記事は2015年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


循環器内科 医員 髙田 七重


 ASOとは足の動脈硬化性変化により動脈の壁が厚くなり、血管の中が狭くなったり、詰まってしまう疾患です。足への血液が不足することで手足の冷えや歩行時の足の痛みがおこったり、足にできた傷の治りが悪くなったりします。さらに最も重症になり足の壊死が進んでいる場合、その生命予後は大腸癌や乳癌と言った主要な癌と比較してもより不良であることがわかっています。

 特に60歳以上の男性に起こりやすいとされますが、糖尿病・高血圧・脂質異常症・喫煙など動脈硬化を起こす原因を抱えた人に合併しやすく、疫学的調査では60歳以上の人のうち700万人前後がASO患者であると推測されています。しかしこのうち診断・治療を行っている人は1%程度に過ぎません。

 下記の症状に当てはまる場合は一度ASOの検査をお勧めします。
(1)歩くと足のしびれやふくらはぎが痛くなる。
(2)歩くとお尻の筋肉が痛くなることがある。
(3)休憩すると足の症状はなくなり、また歩くことができる。
(4)足がいつも冷たく感じる。
(5)足の色調が白い印象があり良くない。
(6)足のだるさやこむら返りが起こりやすい。
(7)足や指の傷が治りにくい。

 ASOの検査として、まずABI があります。足首と上腕で測定した血圧の比で、足の血圧が下がってくることで異常を発見することができます。数分で終了しますので外来で簡単に行うことができます。次に超音波の検査で血管の狭窄を調べ、ASOが疑わしい場合に造影CTやMRI で血管の病気の場所や狭窄の程度を調べます。

 治療は自覚症状によって異なります。足の痛みといった自覚症状がほとんどない場合は禁煙、高血圧や糖尿病、脂質異常症の治療をしっかり行うことが重要です。また足の痛みが軽い場合(200m以上の連続歩行が可能、安静時は症状なし)は血流を改善する内服薬や運動療法を中心に行います。さらに歩行距離が短くなってくると、血管の狭くなった場所や病変の長さに応じてカテーテルを用いて血管を風船で広げたり、ステントという金属の筒を入れる手術や人工血管でのバイパス術を行うことがあります。また安静時にも痛みがあったり、足の傷が進行している場合は前述の血行再建術を積極的に検討し、不適当であれば血管新生療法を考慮することもあります。
 しかしすべてのASO患者の方に言えることは、まずは禁煙です。次に足を清潔に保つようにし、爪の変形や水虫、外反母趾による靴ずれといった足のトラブルを防ぐ必要があります。当院ではWOC(皮膚・排泄ケア専門)ナースや福祉相談員もフットケアへの介入を積極的に行っています。また皮膚科・循環器内科も連携しながら足の傷の処置、カテーテルでの血行再建術を行っています。少しでも気になる症状があれば一度かかりつけの医師や当院外来にもぜひご相談ください。

 最後にASOは動脈硬化によって起こる疾患のため、5-6 割の方が狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気、3-4 割の方が頚動脈や頭の中の血管が狭くなる脳血管の病気、2-4 割の方が腎臓の血管が狭くなる病気を同時に抱えていると言われています。ASOと診断された方はこれらの全身の動脈硬化の検査も受けていただきたいと思います。

| Copyright 2015,03,01, Sunday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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