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血尿症状があれば怖がらずに泌尿器科へ

(この記事は2007年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです。森医師は転勤のため、現在西陣病院で外来診療はしておりません。ご了承ください))


泌尿器科 森 優


膀胱癌は、人種で見ると白人や黒人に多く、日本人には少ないと言えます。最近の日本人が1年間に膀胱癌にかかる率は人口10万人あたり約6人です。原因としては、尿中に排泄された化学物質が膀胱の粘膜に接して発癌させると考えられており、喫煙による膜胱癌の危険性は証明されております。年齢は45歳以上に多く、患者さんの平均年齢は60歳といわれています。症状としては、突然何の症状もなく血尿が出たり、頻尿、排泄時痛といった膀胱炎症状がなかなか改善しなかったりと言った事があげられます。

 膀胱癌には①表在性、②浸潤性の2種類があります。

 ①は膀胱の内腔に向かい発育し、根が浅く筋層には達しないものです。比較的おとなしい癌が多いです。膀胱癌の70%から80%はこのタイプです。

 ②は膀胱壁の深部へ浸潤し筋層にまで達するものです。たちの悪い癌が多いです。


治療法

①の場合は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)が適応になります。特殊な内視鏡を尿道から挿入し腫瘍を切除する方法です。しかし経過を追っていくと膀胱内の新たな部位に再発をすることがあり、再発率は単発性の場合は30から40%、多発性の場合は70から90%とされています。また表在性癌でも上皮内癌という粘膜内に存在するが、細胞の悪性度が高いタイプの場合はBCGの膀胱内注入が行われますが粘膜下層に浸潤している場合は、膀胱摘出が必要なことがあります。表在性癌でも再発を繰り返すうちに浸潤性癌になったり、転移を生じてくる場合がありますが、一般的には生命予後は良好です。

②の場合は基本的には膀胱全摘術が適応になります。膀胱を切除しますから尿を違う所から出すこと(尿路変更)が必要になります。以下の2通りの方法が主に行われています。

○回腸導管法:小腸を15Cm程遊離して、これの一方の断端を閉じるとともに尿管を縫いつけ一方の断端を皮膚に縫い付けるものです。歴史があり安定した手術ですが、お腹に袋を下げる(パウチ)必要があります。

〇代用膀胱造設術:小腸や大腸を60Cmほど遊離し腸管を開いて布状とし球形に縫い、これに尿を貯めるものです。この袋に尿道を縫いつけ、尿が溜まった時には自分で腹圧をかけて排尿します。手技は複雑で、合併症もありますが、ストーマがなく自排尿できる点で優れています。


 ただし浸潤の程度が酷い場合(膜胱外にまで出ていたり、隣接臓器にまで浸潤している)又は転移を既に起こしている場合は、抗癌剤化学療法や放射線治療、膀胱全摘術を単独、又は併用して行います。


 膀胱癌は早期発見、早期治療が膀胱温存又は生命予後の改善につながります。上述しましたような症状が出るようでしたら、怖がらずに泌尿器科を受診してください。

| Copyright 2007,01,01, Monday 10:10am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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