診療に関すること::臨床工学科
当院の透析センターで行われている治療のご紹介
(この記事は2016年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
臨床工学科 主任 松田 英樹 |
2015年末における、我が国の血液透析患者数は324,416人(日本透析医学会統計調査委員会まとめ)で日本人約390人に1人が透析を受けておられます。当院では、1972年(昭和47年)から透析が開始され約40年余りの実績があり、現在約390名の患者さんが維持血液透析を受けられています。
血液透析は、HD(Hemodialysis)と呼ばれ腎臓の働きが低下した方の腎代替療法として血液を浄化する治療です。腎臓の働きは、(1)おしっこを作る(血液をろ過して身体に不要となった老廃物を尿として排泄する、ろ過された血液は再び身体を循環します)、(2)体内環境を調節する(身体の水分・血圧・多く取り過ぎた塩分を調節します、また身体の中にある体液の濃度・量の調節、血液の酸・アルカリ性のバランスを調節します)、(3)ホルモンを分泌します(血液を作るホルモン、骨を強くするホルモン、血圧を調節するホルモン)。この腎臓の働きが低下すると、タンパク尿が出たり血圧が高くなったりします。さらに症状が進んでいくとむくみや食欲不振、貧血なども出てきて放っておけば意識障害や昏睡症状が出てくるため腎臓の代わりの治療が必要になります。
末期腎不全の治療として(1)腎臓移植、(2)血液透析、(3)腹膜透析があります。
血液透析は、専用の機械を用いて血液を体外へ出し、ダイアライザーと呼ばれる特殊なフィルターを通過させるのですが、ダイアライザーには約1万本の中空糸と呼ばれるストロー状の筒があり、その中を血液が通りその周囲に透析液が流れます。中空糸には小さな孔が沢山空いており、その孔を介して拡散と呼ばれる原理で老廃物、電解質、また濾過という原理によって水分などが移動します。そしてきれいになった血液は身体に戻ります。小さな物質であれば良く抜け、大きな物質は抜けにくいのですが、長い治療成績からもっと大きな物質を抜く必要があることが分かってきました。その大きな物質の代表は透析アミロイド症の原因物資であるβ2-マイクログロブリンです。当院でも優れたダイアライザーを用いることで10 年程前よりも透析アミロイド症は減少してきています。大きな物質を抜く方法で最も簡単なのは孔を大きくすることですが、重要なタンパクまで抜いてしまいます。そこで血液と透析液の間で水分を大量に移動させることで、水分と一緒に大きな物質を除去します。それを血液透析濾過HDF(Hemodiafiltration)といいます。血液透析で取りきれない老廃物の除去、血圧の安定効果、貧血の改善、食欲の改善などが期待できます。透析を長く受けられている患者さんで、関節痛がありアミロイド症などの問題を抱えている方や、透析中に血圧が下がって透析が困難になってしまう方だけに保険で認められていました。HDFをさらに改良したものがオンラインHDF(OHDF)といわれる治療です。OHDFは通常のHDFで使用する点滴(補充液)を使用せず、透析に使用する液を直接補充液として使用する方法です。通常のHDFでの補充液は約10Lに対し、OHDFは50 L以上の補液が可能です。しかし透析液を補充液に使用できるのは、厳重な透析液の水質管理をしている施設に限られ、当院では臨床工学技士がその業務を専任しております。現在約100名の方がOHDFを受けておられます。このように当院では患者さんに安全でより良い治療が提供できるように努めています。
| Copyright 2016,11,01, Tuesday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |