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心房細動について

(この記事は2008年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科医長 中森診 


 正常では洞結節が心臓のペースメーカーとなり1分間に50~100回興奮し、この興奮が心房全体に伝わり、房室結節という心房と心室の間を伝って心室まで伝わります。しかし、心房細動では洞結節からの規則正しい興奮がおこらないために、心房が1分間に約300~500回の速さで不規則に細かく震えてしまいます。その結果、心房から心室へ効率良く血液が流れなくなり、心臓のポンプ機能が低下し、脈が不規則になります。

 心房細動は、心臓に病気のある場合(心臓弁膜症、心筋梗塞、心筋症など)や心臓以外の病気のある場合(甲状腺機能亢進症など)におこりやすいとされていますが、明らかな原因のない場合も多く、飲酒が原因でおこることもあります。また、心房細動は年齢とともにおこりやすくなり、70歳を越えると5%以上の割合で心房細動が認められると言われています。

 この不整脈が発作的に起こると(発作性心房細動)、脈拍数が急に速くなったりリズムが乱れたりすることがあるので、胸部不快感や動悸・胸痛・息切れを感じ、外来を受診されることが多いのですが、心房細動であっても頻脈や徐脈でない場合は、自覚症状がなく心電図検査で初めて指摘されることもあります。

 心房細動で心臓に病気のある場合・頻脈や徐脈が強い場合などでは心不全に陥ることがあり、また、心房内の血液の流れが遅くなることが多く、心房内で血液に澱みが生じ血栓ができやすくなります。左心房に血栓ができると、突然左心房から血栓が剥がれて脳動脈に詰まり脳梗塞(心原性脳塞栓)をおこす可能性が高くなるため、心房内で血栓ができにくくなるような治療が必要です。

 心房細動の治療は、①心房細動を正常洞調律に戻す「リズムコントロール」②心房細動時の「レート(心拍)コントロール」③脳塞栓予防のための抗凝固療法の3つが中心です。

 1)リズムコントロールには抗不整脈薬や電気ショック・カテーテルを用いた手術などがあります。

 2)心房細動のレートコントロールは頻脈に対して心拍数を抑える治療が一般的で、心拍数が極端に低下する場合にはペースメーカーを植え込みます。リズムコントロールの治療で洞調律の維持が難しく心房細動が再発することもあり、レートコントロールとリズムコントロールのどちらが有効かは、塞栓症・心不全・生活の質(Quality of Life)などで未だに最終的な結論が出ていないのが現状です。

 3)脳塞栓予防のための抗凝固療法は一般的にワーファリンが有効とされ、血液検査でワーファリンの効き具合を確認する必要があります。適切にワーファリンを服用することによって約60%脳卒中の発症を減らすことができると言われています。

 心房細動は心電図検査で発見できる病気ですので、動悸・胸部不快感・胸痛・息切れなどの自覚症状があれば、心電図検査を受けることをお勧めします。

| Copyright 2008,11,01, Saturday 09:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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