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胆石症と胆嚢炎について

(この記事は2015年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


小林先生

 外科 医長 小林 博喜

 胆石症と言われたことはありませんか?お腹が痛むことはありませんか?今回は胆嚢にまつわる病気についてお話したいと思います。
 

 胆嚢とは、食物の中の脂肪分を消化するために必要な「胆汁」という消化液を蓄えておくための袋状の臓器です。胆汁は肝臓で作られた後、一時的に胆嚢に蓄えられます。そして、食事を摂取すると胆嚢が収縮し、腸へと胆汁が流れ出す仕組みになっています。胆嚢内の胆汁が何らかの原因で結晶化したものが胆石であり、およそ1割の方が胆石を持っていると言われています。胆石をお持ちの方の多くは特に症状が無く、健診などで偶然発見されることが多いですが、腹痛などの症状を来すこともあります。

 図に示しますように胆嚢の出入り口はすぼまって細い管となっています。胆石が出入り口にはさまりこみ、塞がってしまうと主に二つの理由で症状が出現します。一つは胆石発作と呼ばれるものです。食事を摂った際に胆嚢が胆汁を排出しようと収縮しますが、出入り口が塞がっていると収縮できず痛みを生じます。食後にみぞおちのあたりからその右にかけて痛むことが多いです。もう一つは胆嚢炎を起こした場合です。出入り口が塞がることで胆嚢内の胆汁がうっ滞し、その刺激で胆嚢の壁に炎症が起こり、発熱とともにお腹の痛みが生じます。

 急性胆嚢炎の治療法として、手術を行わない保存的治療もありますが、再発率が30% 程度と高いため、基本的に手術、すなわち胆嚢摘出術を施行する必要があります。そして大切なことは発症後早期(72 時間以内と言われています)に手術をすることが望ましいということです。これは、発症後時間がたつと炎症の影響で胆嚢と周囲の腸などの臓器がくっつく、癒着と呼ばれる変化が起こり、手術が難しくなるからです。

 一方、胆石症の治療はどうでしょうか。胆石発作等の症状を認める場合は、症状が反復してしまうことや、胆嚢炎の原因にもなるため原則的に手術が必要です。また、症状が無い場合でも、胆石による慢性的な刺激により発癌する危険性があるため、定期的な超音波検査を受ける必要があり、胆石を多数認める場合や、胆嚢の壁が厚くなる場合は手術が望ましいです。   

 当院では胆嚢を摘出するにあたり、直径5mmの筒状のカメラと手術操作を行うための鉗子と呼ばれる細い棒状の器具を用いた腹腔鏡手術を施行しており、2010 年からは専用の器具を用いてカメラと鉗子を全て臍の傷から挿入する単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術をほぼ全例で施行しております。手術後の傷がほぼわからない、術後の傷の痛みが少ない、回復が早く通常術後 2 日目までに退院が可能などのメリットが多く、患者さんに大変満足頂いております。胆嚢を摘出しても大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、術直後一時的に下痢をしやすくなる程度で、最終的にはおさまりますので特に困られることはありません。

胆石症 みぞおちからその右側にかけて痛みを自覚したことがある方は胆石症、胆嚢炎の可能性があります。胆嚢炎を起こす前に、あるいは胆嚢炎を起こしても早期に手術をすることで、安全に腹腔鏡を使って手術することができます。気になる方はぜひかかりつけの先生や当院にご相談下さい。

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閉塞性動脈硬化症(ASO)について

(この記事は2015年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


循環器内科 医員 髙田 七重


 ASOとは足の動脈硬化性変化により動脈の壁が厚くなり、血管の中が狭くなったり、詰まってしまう疾患です。足への血液が不足することで手足の冷えや歩行時の足の痛みがおこったり、足にできた傷の治りが悪くなったりします。さらに最も重症になり足の壊死が進んでいる場合、その生命予後は大腸癌や乳癌と言った主要な癌と比較してもより不良であることがわかっています。

 特に60歳以上の男性に起こりやすいとされますが、糖尿病・高血圧・脂質異常症・喫煙など動脈硬化を起こす原因を抱えた人に合併しやすく、疫学的調査では60歳以上の人のうち700万人前後がASO患者であると推測されています。しかしこのうち診断・治療を行っている人は1%程度に過ぎません。

 下記の症状に当てはまる場合は一度ASOの検査をお勧めします。
(1)歩くと足のしびれやふくらはぎが痛くなる。
(2)歩くとお尻の筋肉が痛くなることがある。
(3)休憩すると足の症状はなくなり、また歩くことができる。
(4)足がいつも冷たく感じる。
(5)足の色調が白い印象があり良くない。
(6)足のだるさやこむら返りが起こりやすい。
(7)足や指の傷が治りにくい。

 ASOの検査として、まずABI があります。足首と上腕で測定した血圧の比で、足の血圧が下がってくることで異常を発見することができます。数分で終了しますので外来で簡単に行うことができます。次に超音波の検査で血管の狭窄を調べ、ASOが疑わしい場合に造影CTやMRI で血管の病気の場所や狭窄の程度を調べます。

 治療は自覚症状によって異なります。足の痛みといった自覚症状がほとんどない場合は禁煙、高血圧や糖尿病、脂質異常症の治療をしっかり行うことが重要です。また足の痛みが軽い場合(200m以上の連続歩行が可能、安静時は症状なし)は血流を改善する内服薬や運動療法を中心に行います。さらに歩行距離が短くなってくると、血管の狭くなった場所や病変の長さに応じてカテーテルを用いて血管を風船で広げたり、ステントという金属の筒を入れる手術や人工血管でのバイパス術を行うことがあります。また安静時にも痛みがあったり、足の傷が進行している場合は前述の血行再建術を積極的に検討し、不適当であれば血管新生療法を考慮することもあります。
 しかしすべてのASO患者の方に言えることは、まずは禁煙です。次に足を清潔に保つようにし、爪の変形や水虫、外反母趾による靴ずれといった足のトラブルを防ぐ必要があります。当院ではWOC(皮膚・排泄ケア専門)ナースや福祉相談員もフットケアへの介入を積極的に行っています。また皮膚科・循環器内科も連携しながら足の傷の処置、カテーテルでの血行再建術を行っています。少しでも気になる症状があれば一度かかりつけの医師や当院外来にもぜひご相談ください。

 最後にASOは動脈硬化によって起こる疾患のため、5-6 割の方が狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気、3-4 割の方が頚動脈や頭の中の血管が狭くなる脳血管の病気、2-4 割の方が腎臓の血管が狭くなる病気を同時に抱えていると言われています。ASOと診断された方はこれらの全身の動脈硬化の検査も受けていただきたいと思います。

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新年のごあいさつ  平成27年 元旦

(この記事は2015年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


伊谷先生 西陣病院 院長 伊谷 賢次

 明けましておめでとうございます。

 皆様には、さわやかな新春をお迎えのことと心からお慶び申し上げます。また、昨年中、当院に賜りました数々のご厚情とご支援に対しまして、職員一同心より御礼申し上げます。


 昨年は4 月より消費税が5%から8%に増税されました。消費税増収分の一部は社会保障の充実にあてられることになっていますが、国民の生活はもとより、病院経営にとっても厳しい増税となりました。また、同じ 4 月に 2 年ごとの診療報酬改定がありました。7 対 1 看護の急性期病院のハードルが高く設定されました。当院のような透析患者さんや合併症の多い高齢患者さんを診療する急性期病院にとっては厳しい改定となりました。このような厳しい状況でも、当院の目指すべき目標は、設立当初からの基本方針である、地域に密着した良質な医療を高いレベルで提供することです。そのためには、ハード面、ソフト面ともさらに充実させなければなりません。

 ハード面では、昨年 4 月に超音波内視鏡を導入し、増加する膵癌などの診断の向上や新たな内視鏡的治療の可能性などが期待されます。また、昨年 7 月に脊椎手術において術中神経モニタリングやナビゲーションシステムを導入し、より安全で低侵襲な手術が可能となりました。今後も良質な医療を提供するには、できるだけ最新の機器整備が必要であり、今後も計画的に医療機器の更新を行っていく予定です。

 ソフト面では、今後もさらに診療体制を充実させ専門性の高い急性期病院を目指します。当院は中高年層の多い地域で、透析患者さんと同様に、多くの合併症を持った患者さんを診療しています。合併症の多い患者さんが安心して安全で高度な医療を受けていただけるには各科医師の連携はもちろん看護師をはじめ、すべての医療スタッフのチームワークが必要です。また、チームワークだけでなく、職員の教育にも今まで以上に力を注いでいきます。医師には専門医のライセンス取得、看護師には認定看護師の取得を積極的にサポートしています。また、院内では看護研修室にシミュレーターを導入し、看護教育専従の看護師を中心に日々看護研修を行っています。

 今後も職員全体が患者さんを主体に考え、良質な医療を提供するためにスタッフ一人ひとりが役割と責任を自覚して努力していきますので、今年一年、さらなるご指導、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。


平成二十七年 元旦


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チーム医療でさらなるレベルアップを図ります

(この記事は2015年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


松浦先生 院長補佐 松浦 史良

 明けましておめでとうございます。西陣病院に赴任して30 年以上が過ぎました。この期に及んで毎日同じことの繰り返しで疲れてしまうなあと感じている今日この頃です。こんな不届きな輩は私だけだと思いますが。

 昨今の医療のシステムはチーム医療と呼ばれるもので、患者さんを中心に置いて医師,薬剤師,看護師やその他の医療職が専門性を最大限に発揮し,かつ,各部署同士が連携・協働して提供する医療を行っています。実際入院されると経験されると思うのですが、医師や看護師以外に薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど多くの部署の人間がベッドサイドに訪れます。

 西陣病院でも各部署が毎日同じことを繰り返しながら少しでもレベルアップを図れるよう努力しています。それぞれの部署が少しでもレベルアップすることで患者さんにはより安全で良質な医療を提供できるのだから。

 どんな仕事もそうですが、やはり毎日同じことを繰り返しながら腕を磨くことの大切さをしみじみ感じる今日この頃です。初老医師のつぶやきと聞き流してください。

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明けましておめでとうございます

(この記事は2015年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


 西陣病院 内科 副部長 中森 診


 循環器内科は、高血圧、虚血性心疾患、心不全、不整脈などの循環器疾患を有する患者さんの診療を担当する科です。高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病を有する患者さんの増加と人口の高齢化によって循環器疾患の患者さんが増加の一途を辿っています。西陣病院は発足以来、西陣地区を主なる診療圏として、病診連携のもとに患者さんそして地域のニーズに応えて参りました。

 10 年前に西陣病院に赴任させて頂いた時には循環器科医師はわずか2 名でしたが現在は5 名に増え、救急医療を含めた様々な循環器疾患を診療させて頂いています。

 急性心筋梗塞症や急性心不全などの救急治療をはじめとして、経皮的冠動脈ステント留置術(冠血管をバルーンカテーテルで広げ、ステンレス製の網状の筒を血管内に植え込み血流を十分に確保する方法)や徐脈性不整脈に対するペースメーカー移植術,末梢動脈疾患(足や手の動脈が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなることでさまざまな症状をひき起こす病気)に対する末梢動脈血管形成術などの診療を行ってきました。循環器内科では、特に循環器室での治療の時には、安 全(Safety)に迅速(Speedy)かつシンプル(Simple)に治療し、患者さんにやさしく(Soft)笑顔で接する(Smiling)ことの「5S」を心がけております。

 我々が目指す循環器医療の目標は、「患者さんのために全力を尽くす」ことです。循環器室での検査・治療は医師だけでは行うことができませんので、看護師,臨床工学技士,診療放射線技師とともに力を合わせ、チームワークを大切に、地域の住民の皆様のために質の高い安全・安心な最善の医療を提供すべく、患者さんに信頼される循環器内科を目指してスタッフ全員が一丸となってがんばっていますので、西陣病院循環器内科にどうぞお気軽にご相談ください。

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