診療に関すること::外科
胆石症と胆嚢炎について
| 外科 医長 小林 博喜 |
胆石症と言われたことはありませんか?お腹が痛むことはありませんか?今回は胆嚢にまつわる病気についてお話したいと思います。
胆嚢とは、食物の中の脂肪分を消化するために必要な「胆汁」という消化液を蓄えておくための袋状の臓器です。胆汁は肝臓で作られた後、一時的に胆嚢に蓄えられます。そして、食事を摂取すると胆嚢が収縮し、腸へと胆汁が流れ出す仕組みになっています。胆嚢内の胆汁が何らかの原因で結晶化したものが胆石であり、およそ1割の方が胆石を持っていると言われています。胆石をお持ちの方の多くは特に症状が無く、健診などで偶然発見されることが多いですが、腹痛などの症状を来すこともあります。
図に示しますように胆嚢の出入り口はすぼまって細い管となっています。胆石が出入り口にはさまりこみ、塞がってしまうと主に二つの理由で症状が出現します。一つは胆石発作と呼ばれるものです。食事を摂った際に胆嚢が胆汁を排出しようと収縮しますが、出入り口が塞がっていると収縮できず痛みを生じます。食後にみぞおちのあたりからその右にかけて痛むことが多いです。もう一つは胆嚢炎を起こした場合です。出入り口が塞がることで胆嚢内の胆汁がうっ滞し、その刺激で胆嚢の壁に炎症が起こり、発熱とともにお腹の痛みが生じます。
急性胆嚢炎の治療法として、手術を行わない保存的治療もありますが、再発率が30% 程度と高いため、基本的に手術、すなわち胆嚢摘出術を施行する必要があります。そして大切なことは発症後早期(72 時間以内と言われています)に手術をすることが望ましいということです。これは、発症後時間がたつと炎症の影響で胆嚢と周囲の腸などの臓器がくっつく、癒着と呼ばれる変化が起こり、手術が難しくなるからです。
一方、胆石症の治療はどうでしょうか。胆石発作等の症状を認める場合は、症状が反復してしまうことや、胆嚢炎の原因にもなるため原則的に手術が必要です。また、症状が無い場合でも、胆石による慢性的な刺激により発癌する危険性があるため、定期的な超音波検査を受ける必要があり、胆石を多数認める場合や、胆嚢の壁が厚くなる場合は手術が望ましいです。
当院では胆嚢を摘出するにあたり、直径5mmの筒状のカメラと手術操作を行うための鉗子と呼ばれる細い棒状の器具を用いた腹腔鏡手術を施行しており、2010 年からは専用の器具を用いてカメラと鉗子を全て臍の傷から挿入する単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術をほぼ全例で施行しております。手術後の傷がほぼわからない、術後の傷の痛みが少ない、回復が早く通常術後 2 日目までに退院が可能などのメリットが多く、患者さんに大変満足頂いております。胆嚢を摘出しても大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、術直後一時的に下痢をしやすくなる程度で、最終的にはおさまりますので特に困られることはありません。
みぞおちからその右側にかけて痛みを自覚したことがある方は胆石症、胆嚢炎の可能性があります。胆嚢炎を起こす前に、あるいは胆嚢炎を起こしても早期に手術をすることで、安全に腹腔鏡を使って手術することができます。気になる方はぜひかかりつけの先生や当院にご相談下さい。
| Copyright 2015,03,01, Sunday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |