(この記事は2017年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
| | 腎臓・泌尿器科 医長
乾 将吾 |
~尿路結石について~
尿路結石とは、尿の通り道である腎臓、尿管、膀胱に沈着する結晶の石のことを指します。腎結石と尿管結石が全体の95%を占めます。ミイラの膀胱からも結石が見つかっており、大昔から人類を苦しませていた病気の一つです。基本的には無症状ですが、尿管につまることで急に激痛を来すこともあります。
◆疫 学
男性に多く、年間約1000人に1人が罹患します。また40年前の約3倍、10年前の約1.6倍と増加傾向であり、食生活や生活様式の欧米化や診断技術の向上などが原因とされています。
男性の7人に1人、女性の15人に1人が罹患します。
◆成 分
カルシウム結石、感染結石、尿酸結石などが存在します。腎結石・尿管結石では男女ともにカルシウム結石が最多です。次に男性では尿酸結石、女性では感染結石となっております。
◆症 状
結石は存在するだけでは特に症状は認めません。尿管にはまり込むと尿の流れがせき止められ、腎臓が腫大= 水腎症を来し、痛みの原因となります。腎臓は手を後ろに回してわき腹と背骨の中間あたりの場所にあるため、その部分が痛くなります。
腎臓は大きくなっていることにだんだん慣れてしまうため、結石が移動しなくても数日で痛みが消えることが多いとされています。
◆検 査
超音波検査で水腎症の確認が可能です。レントゲン検査でほとんどの結石は確認できますが、一部の結石はレントゲンにはうつりません。CT 検査ですべての結石を確認することができ、また急に腹痛を来す他の疾患の検索にも役立ちます。
◆排石促進治療
1cm未満の結石は自然排石が可能です。排石に最も重要なのは水分摂取であり、1日2Lほどの摂取を推奨します。1-2か月以上排石しないときや、尿路感染のあるとき、また腎機能障害を認めるときには、破砕治療へと移行します。破砕治療には体外衝撃波結石破砕術(ESWL)と手術治療があります。
◆破砕治療
ESWLは、結石をレントゲンで見ながら衝撃波で破砕する方法です。1回約1時間、3000-4000発ほど施行します。レントゲンにうつらない結石には施行できません。
当院では日帰りで施行することが多く、腎臓に近い結石に関しては腎出血が懸念されますが、基本的には大きな合併症はありません。硬い結石の場合は複数回の治療が必要な場合もあります。また破砕できても再び尿管の途中でつまることもあります。
手術治療として内視鏡治療= 経尿道的結石破砕術について説明します。内視鏡を尿道から結石まで挿入し、結石を直接見ながらレーザーで破砕します。以前は尿管結石のみが対象でしたが、近年は内視鏡の発達により腎結石に関しても治療可能です。
膀胱に近い尿管結石の場合は腰椎麻酔(下半身麻酔)、腎臓に近い尿管結石や腎結石に関しては全身麻酔で行うことが多いです。入院期間は4-5日ほどであり、ESWL よりも破砕効果は大きいとされています。
いずれの治療法にもメリット・デメリットがあり、患者さんの背景や適応を十分考えた上で様々な観点から治療法を相談致します。
◆再発予防
約半数が再発すると言われており、再発予防はとても重要です。
再発予防の基本は水分摂取であり、食事以外に1日2L 以上の飲水が必要とされています。
最も頻度の多いカルシウム結石ですが、中でもシュウ酸カルシウム結石が多いため、シュウ酸の摂取を減らす必要があります。食品ではたけのこ、バナナ、チョコレート、ほうれんそうなど、飲み物ではコーヒーや紅茶などがあげられます。お茶は玉露の入ったものやお煎茶などよりも、麦茶やほうじ茶などがよいとされています。
一定量のカルシウムは逆に摂取した方がよいとされております。1日摂取量として、牛乳では大きいパック1本、豆腐だと2丁ほど必要ですが、日本人の1日摂取量はそこまで達していないのが現状です。
尿酸結石についてです。プリン体の摂取を減らすことが重要であり、1日400mgをこえないようにする必要があります。プリン体を多く含む食品にはレバー、かつお、さんまなどがあります。特に指摘されているのがビールの摂取であり、1本あたり約30-40mgのプリン体が含まれています。
~まとめ~
尿路結石は人口の高齢化や食文化の欧米化などから、今後も増加することが予想されます。概ね排石可能な大きさのものが多く、主に無症状ですが、知らない間に次第に増大し、場合によっては入院治療が必要になる場合もあります。
再発予防と適切な治療法の選択が重要であり、気になる方は、一度腎臓・泌尿器科に受診してください。
| Copyright 2017,11,01, Wednesday
12:00am
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