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心不全について

(この記事は2010年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 副部長 中森 診

心不全とは、さまざまな原因により心臓の血液を送り出す能力が低下した状態です。心不全になると十分に血液を送り出せなくなるので、体に必要な酸素が不足して息切れがしたり、手足の血流が悪くなるといった症状が出ます。

心不全は大きく2つに分類されます。心臓には4つの「部屋」があり、その4つのうち、左側の部屋(左心房と左心室)の機能がわるくなったものを「左心不全」、右側の部屋(右心房と右心室)の機能がわるくなったものを「右心不全」といい、それぞれで現れる症状が違います。

左心不全は血液を肺から受け取って全身に送り出す力が弱くなるので、肺から来る血液が心臓に入りにくくなり、肺に水がたまりやすくなります。肺に水がたまると酸素を十分に取り込むことができなくなり、安静にしていても息苦しさが生じたりします。

右心不全では血液を全身から受け取って肺に送り出す力が弱くなるので、心臓に戻ってくるすぐ手前の肝臓が腫れたり、手足の静脈から戻ってくる血液が心臓に入りにくくなったりして全身の浮腫が起こります。
心臓また、急に心不全の症状が出てきたものは「急性心不全」、慢性的に心不全の症状がある場合は「慢性心不全」、慢性心不全から急に悪くなったものは「慢性心不全の急性増悪(ぞうあく)」といいます。

原因は、洞不全症候群や心房細動などの不整脈,高血圧症や心臓弁膜症による心臓への過負荷,心筋梗塞や心筋炎や心筋症などの心筋障害,貧血や肺気腫による低酸素状態,甲状腺機能低下症などの代謝異常などさまざまで、無症状の人から安静にしていても呼吸困難などの症状がある人まで、その程度もさまざまです。

診断は、まず胸部レントゲン検査,心電図検査,心臓超音波検査,血液検査などを組み合わせて行い、さらに詳しく調べる必要があれば、心臓CT検査や心臓カテーテル検査などを行います。

治療法は原因により違いますが、心不全の多くは徐々に進行してしまうため、①より長く生きられるように、②症状を緩和して日常生活をより快適に過ごせるように、この二つを目標に重症度に応じて治療します。

まず、減塩,減量,禁煙,アルコール制限など生活スタイルを改善し、それでも症状が改善しない場合には薬物療法が必要となります。心不全の治療に使われる主な薬剤は利尿薬,ベータ遮断薬,アンギオテンシン変換酵素阻害薬やアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬,強心薬などで、原因や症状に応じて使い分けます。

心臓の弁に障害があって心不全になっている人は弁の修復や人工弁に取り換える手術が必要なこともあります。冠動脈に狭いところがあって心不全になっている人は冠動脈ステント留置術や冠動脈バイパス術を行います。不整脈(徐脈)が原因で心不全になっている人はペースメーカー移植術を行います。より重症の患者さんの場合には心臓再同期療法,心臓縮小手術,心臓移植などの方法もあります。

最近息切れが強くなってきたと感じられる方は、心不全が原因の可能性もありますので、主治医の先生に相談されるか、内科外来を受診して頂いて、症状の軽い早い時期から治療を始めることが大切です。

| Copyright 2010,06,29, Tuesday 07:00pm administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

気胸と内視鏡(胸腔鏡)手術

(この記事は2010年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載予定です)

外科医長 中瀬 有遠

呼吸が苦しい、胸が痛い、咳がでるなどの症状のときに、肺に穴があいて空気が漏れる状態になっていることがあります。それが気胸です。図1のように肺のパンクしたところから空気が漏れて胸腔という閉ざされた空間にたまるため、肺が圧迫されてしぼんでしまうので呼吸が苦しくなります。


図1 写真1 写真2
図1 写真1 写真2

原因別に大きく①自然気胸、②外傷性気胸に分類されます。①は肺嚢胞(ブラ)や肺気腫などの肺疾患が原因で、②は交通事故などで胸部を打撲した場合や、転倒して背中や胸を強く打ったとき(スノーボードで転倒した時など)におこります。特にブラが原因となる自然気胸では長身で痩せている若い男性に多いという特徴がありますが、喫煙歴が長い高齢者は肺気腫などの肺疾患が気胸の原因になることがあります。

気胸が疑われたら胸部のレントゲン写真やCTなどで診断します。レントゲン写真(写真1)で肺が縮んでいたら気胸です。肺の縮み具合によりチューブを入れて胸腔内の空気を抜く必要があります。チューブを入れて空気を抜き、肺が広がったところで胸部CT(写真2)を撮影すると肺尖部(肺の先端)のブラ(矢印部分)がわかることがあります。空気漏れが続かなければチューブを抜くことが可能ですが、再発率は50%程度で、いつ再びパンクするかわかりません。一説ではストレスのかかる大事な時期に起こりやすいとも言われております。また、将来パイロットやダイバーなど(気圧の変化が激しい仕事)などになろうという方は気胸が発症した場合致命的になる可能性があります。そのため、治療の主流となっているのが内視鏡(胸腔鏡)下手術です。ブラとは写真3のように中が透けてみえるくらい膜がうすい風船のようなものです。こんなに薄いといつ破裂してもおかしくないですよね。手術では図2のように胸に2~3か所ぐらいの穴(約1~2cm)をあけて、内視鏡とマジックハンドのような手術器具を入れ、モニターを見ながら手術を行います。風船部分を写真4のような自動縫合器というホッチキスの針がたくさん並んだ便利な機械を使って切り取ります。手術は1~2時間ぐらいで、傷も小さく、さらに当院では皮下埋没縫合という抜糸の必要ない、きれいに治る方法で皮膚を縫っています。また、胸腔鏡での手術は体に与える負担や術後の苦痛も少ないので手術の翌日には歩くことも食事もでき、数日で退院できます。


写真3 図2 写真4
写真3 図2 写真4

もちろん、このような手術は気胸を発症した全て方に適応となるわけではありません。開胸による手術をする方がよい場合もありますし、薬剤による胸膜癒着法など手術以外の治療法もあります。冒頭に述べました胸部症状がある方、以前に気胸と言われたが手術をしていない方、再発が繰り返し起こる方などは外科でご相談ください。


| Copyright 2010,05,12, Wednesday 10:10am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

慢性期治療病棟 西館4階・5階病棟の紹介

(この記事は2010年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


西館5階病棟 科長 三輪徳子


西館4階・5階病棟は慢性期治療病棟です。慢性期治療病棟とは、急性期の治療を終え、維持期・慢性期の治療をする方と、退院の準備をする方々の病棟です。患者さまの病気は、5つの急性期病棟から移ってこられるので多岐に渡り、内科・外科・泌尿器科・整形外科など様々です。現在102歳の患者さまを筆頭に、ご高齢で複数の病気を持つ方が多く入院されており、よりチーム医療が求められる病棟です。患者さまには、入院後にお部屋の移動をお願いすることがありますが、患者さまの安全を守るためと、地域の方やかかりつけの患者さまの急な入院の受け入れを円滑に行うために必要と考えますのでご協力をお願いいたします。


西館4階・5階病棟ではこのような看護をしています

慢性期治療病棟は、パーキンソン病などの難病や透析治療中の方、病気の治療後や手術後などが原因で肢体不自由1級2級程度(身体障害者福祉法)の日常生活自立度の方々、重度の意識障害などで医療・看護・介護が必要となる患者さまが8割以上いらっしゃいます。他には脳梗塞後のリハビリテーションを受ける患者さまや悪性新生物いわゆる癌で入院中の患者さまもいらっしゃいます。

私たちは、病棟を治療の場だけでなく、患者さまの毎日の生活の場として考え、日々の生活を満足して、快適に過ごしていただくことを大切に看護を行っています。患者さまとご家族が抱える悩みを、医師や理学療法士、社会福祉士、薬剤師、栄養士とともに考え、患者さまやご家族の方に今後の方向性や目標を相談しながら解決できるよう関わっております。この際に気をつけているのは、ご家族のお考えと、医療者の方針がずれないことです。患者さまのご希望ができる限りかなえられるよう、また、時機を逸することのないように、私たちは、患者さま・ご家族との相談と意思の確認の場を設けております。例えば、誤嚥があって、口から食事が摂れない患者さまの場合どのような栄養補給法を選択するでしょうか。患者さまの中には、誤嚥をする可能性を承知の上で経口摂取法を選ばれる方もいらっしゃいます。また、長い間中心静脈から点滴で栄養を取られている方もいらっしゃいます。あるいは、胃瘻を作り経管栄養を選択し、自宅に退院された方もいらっしゃいます。このように、患者さまが受ける治療は患者さまが意思決定することができます。患者さまやご家族の方の意思決定を支えるため、情報を提供することや、わかりやすく説明することや、患者さまの思いを代弁するのも私たちの大切な仕事です。

そして患者さまが、日々の時間を誰と一緒にどんな風に過ごしたいか、入院の時にお渡しする「入院に関する事前申し出書」を通してお聞きしています。治療に対する患者さまのお考えやご希望、お悩みや困っていることなどをお聞かせ下さい。患者さまやご家族の方が納得できる方法を私たちは支援したいと考えています。


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ボランティア活動をふり返って

(この記事は2010年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

ボランティア 宮本清正



こちらで病院ボランティアをさせて頂いて2年目となり、昨年末、突然倒れた母親の対処にボランティア経験がすごく役にたった。

古い田舎の旧家の長男に生まれ、家業以外に神事を初めとする伝統行事やしきたりをこなして来た。

10年以上もやっている内に形から入って心にいたるというか「一族の者がサラリーマンとして、パソコンや出張、人脈づくりのための酒やゴルフという現実生活に忙しい中で、1人はこう云う者がいるのも全体のバランスがとれて良いだろう。何らかの形で人の役に立つ事は良い事だ。ノールール、反則ありのプロレスより礼に始まり礼に終わる柔道のような人生は、紳士的で理想だ。生きていたら順境も逆境もあり、なかなか難しいけど」と言う考えも少しづつ私の中に芽生えていた。それだけに、ボランティアをさせてもらい一人で病院周りの草むしりをしていても、困っている人を助けている病院の草むしりをしているんだと言う自己満足があった。

また、一般企業しか体験していなかった私にとって、人間の持つマンパワーである社交性、知力、体力を人の健康のリカバリーのために使っておられる病院で働く人の姿も新鮮だった。

個人的にも「主体的に動く大切さ」を知り、長い田舎暮らしの中で目立たず、騒がず静かにしておく事が、世間体にうるさい田舎暮らしにとって安全だと言う考えに自然と固まりつつあったので、私にとって新たな発見となり、今後、親とバトンタッチして家業をしたり、地域の役員活動をして行く上で、大切な事を気付かせてもらえたと思っている。

時間的ゆとりがあれば、今年は帰り道に古典雅楽を習いたいと思っている。


| Copyright 2010,04,28, Wednesday 04:19pm administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

カリウム -高血圧を予防-

(この記事は2010年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

栄養科 管理栄養士 山本茂子


カリウムのはたらき
  • カリウムは体の中でナトリウムとともに浸透圧を維持します。
  • ナトリウムの排泄を促して血圧を下げる作用があります。
  • 筋肉のはたらきをよくします
欠乏症 高血圧、無気力、夏バテ、不整脈
過剰症 過剰に摂取しても尿内に排泄されます。

腎臓の機能障害で尿での排泄が困難だと、高カリウム血症を起こす場合があります。
高カリウム血症 … 手足のしびれ、不整脈、心停止

カリウムを多く含む食品(100gあたり)
野菜類 : アボガド720mg、小松菜500mg
イモ類 : さつま芋540mg、里芋560mg、長いも430mg
豆 類 : 納豆660mg、きなこ1900mg
きのこ類 : シメジ380mg、えのき340mg、エリンギ460mg
果 物 : バナナ360mg、メロン350mg、干し柿670mg
種実類 :  アーモンド740mg、くり460mg、バターピーナッツ760mg

献立例
小松菜のアーモンド味噌和え 1人分
(エネルギー:64kcal, カリウム:469mg, 塩分:0.4g)

小松菜…80g スライスアーモンド…8g
味噌…小さじ1/2 砂糖…小さじ1/4
  1. 小松菜はゆでて水をとり、水気を絞って3cm長さに切る。
  2. フライパンにアーモンドを入れて弱火にかけ、きつね色になるまでから入りする。すり鉢ですり、Aを加えてさらにすり混ぜる。
  3. 2. に1. を加えてあえる。
きのこの酸辣湯 1人分
(エネルギー:153kcal, カリウム:321mg, 塩分1.0g)

しめじ…20g えのき…20g 白ねぎ…30g
白菜…30g セロリ…10g 赤唐辛子…少々
生姜薄切り…少々 スープ…鶏ガラスープの素小さじ1、水250ml 酒…小さじ1
醤油…小さじ1 酢…小さじ1 こしょう…少々
片栗粉…大さじ1/2 水…大さじ1
  1. しめじは小房に分ける。えのきは長さを半分に切る。白ねぎは適量を飾り用の白髪ねぎに切り、残りは細切りにする。白菜、セロリは細切りにする。赤唐辛子は種を除き小口切りにする。生姜は千切りにする。
  2. 鍋にスープを煮立て1. と酒を加える。沸騰したら弱火にし、全体に火が通るまで煮る。Aで調味しBでとろみをつける。
  3. 器に盛り、白髪ねぎを飾る。

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