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腎臓を守る薬のはなし

(この記事は2011年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



薬剤部 薬剤師 中野 葉子

腎臓を守る薬について
 慢性腎臓病(CKD)という言葉をご存じですか? CKDとは腎臓の働きが低下し、尿にタンパクが何カ月も出る症状を言います。治療せずに放置しておくと腎不全となり、人工透析(腎臓の代わりに機械的に体をきれいにする方法)を必要とします。加齢と共に腎臓の働きは低下してきますが、自覚症状がほとんどありません。『気付いたら腎臓が悪くなっていた!』ということがないように、まずは血液検査(血清クレアチニン値)や尿タンパク検査を3ヶ月に1回程度受けて腎臓の状態を把握しましょう。


 糖尿病や高血圧の人は、そうでない人よりも早く腎臓の働きが低下すると言われています。特に高血圧は腎臓に負担をかけるため血圧をきちんと下げることが大切です。腎臓が悪くなってくると、体内の塩分のバランスが崩れて血圧が高くなってきます。そして血圧が高い状態が続くとさらに腎臓への負担が大きくなり腎臓病が進みます。


 血圧をきちんと下げるには、減塩(6g/日以下)と血圧を下げる薬をしっかり服用することが重要です。血圧を下げる薬を何種類も服用されている方も多いのではないですか? 実は、『血圧を下げる薬』とひとことで言ってもいくつかの種類があり、それぞれで作用する部位が違います。中には、腎臓の血管に働きかけて負担を軽くし、尿にタンパクが出るのを減らす働きを持つものがあります。(西陣病院採用薬:タナトリル、レニベース、ミカルディス、ブロプレス、ディオバン、オルメテック、アバプロ、ラジレス)血圧が目標値(130/80㎜Hg)以下であっても腎臓を守る目的で医師から処方されることもあるので、もらった薬を調節したりせずに毎日定期的に服用を続けてください。「食事を摂らない時は薬を飲まなくていいの?」という質問をよく受けますが、血圧を下げる薬は食事に関係なく、1日の決められた回数を決められた時刻に服用することをお勧めします。


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透析センターのご紹介

(この記事は2011年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



看護部 透析センター科長 佐伯副部長


 西陣病院透析センター看護部は45名の看護師と5名の看護アシスタントが在籍しています。

 看護部の中では一番所帯の大きな部署です。患者様は390名あまりおられ、腹膜透析をされている方も8名おられます。多くの患者様に対して、患者様個々への対応や継続した看護が充実したものになるように、今年度から固定チームナーシングを具体的に取り組み始めました。従来から分かれていた3ブロックを更に2チームずつ計6チームに分け、情報を集約及び伝達しやすくし、また、チームでカンファレンスをし、患者様に合った看護を考え、ベテランから新人まで統一したより良い継続看護を提供したいと考えています。担当看護師は極力自分の担当患者様のところに出向き、患者様の話に耳を傾け、名前で呼んでもらえるように信頼関係を築く事が目標です。

 また、多くの患者様を看るためには機能的に動かなければならないことも少なくありません。コメディカルが集まり、フットケア委員、リン・カルシウム委員、CAPD委員、バスキュラーアクセス(シャント)委員、糖尿病管理委員、CKD委員、感染対策委員、事故・災害対策委員、記録委員、教育委員、貧血委員など月一回の委員会を持ちスタッフ全員が役割を持って活動しています。また、採血データを一元管理して内服薬・注射薬の与薬量の調整をきめ細かくかつ効率的に医師のサポートが出来るようにしています。

 更に、透析に至らないために慢性腎臓病治療にも力を入れています。腎臓は自覚症状の少ない臓器です。気づいた時には末期腎不全の一歩手前という事も少なくありません。早期に治療を開始し生活習慣を改善すれば、透析をせずにすむか、もしくは遅らせることが出来ます。各科のスタッフが集まり腎臓病教室や教育入院なども行っていますので、血圧が130㎜Hg以上ある方や糖尿病の方、尿にたんぱくが出るという方はかかりつけの先生に相談され、是非一度腎臓病教室にお越し下さい。

透析センターのご案内


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本館3階 透析病床のご紹介

(この記事は2011年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



臨床工学検査科 副主任 青木 康裕

 当院では115床のワンフロアー化された透析センターとは別に2008年4月、本館3階病棟へ透析を行なう為の治療室(写真1)を開設しました。今回はこの治療室についてご紹介させていただきます。この治療室では、同フロアに入院されていてADL(日常生活動作)が低下し透析センターに搬送困難な患者様を対象に透析治療をさせて頂いています。特長として下記の2点が挙げられます。

  • ベッドが常設されていない
      →患者様が病室で使用されているベッドごと入室していただきます。
  • リフト式スケール(写真2)の使用
      →シートマットを患者様の下に敷きそれを吊り上げて体重測定を行います。
  •  従来は、搬送困難な患者様の透析センターへの移動には、スケール(体重計)付きストレッチャーに乗り換えての移動及び体重測定を行っていましたが、治療室開設により、同フロア内で透析治療が行えること、体重測定時の移送が減り、患者様の負担を軽減することができました。


    (写真1)治療室内観(写真2)リフト式スケール
    (写真1)治療室内観(写真2)リフト式スケール

     担当スタッフは病棟看護師、臨床工学技士が1名ずつ常駐し、透析センター配属の看護師、臨床工学技士からのバックアップもあり迅速な対応ができるようにしています。以上のような工夫に加え病棟スタッフとの連携も密にして、透析病床ならではのきめ細やかな治療が出来るようこころがけています。


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    腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術について 

    (この記事は2011年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


    中瀬有遠 外科 医長 中瀬 有遠

    鼠径ヘルニア断面図 鼠径ヘルニア(脱腸)はお腹の中にある小腸などの一部が、足の付け根(鼠径部)の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気(西陣だよりの2009年5・6月号:福本兼久、ヘルニア(脱腸)外来」を開設します!でも紹介しました。)で、治療としては手術が唯一の方法です。当院では、前回ご紹介した手術法(鼠径部切開法)に加え、本年より積極的に腹腔鏡下手術(経腹的腹膜前修復法:TransAbdominal Pre-Peritoneal hernia repairを略してTAPP法と呼びます)を導入しており、今回はそのTAPP法について解説いたします。

     腹腔鏡手術は全国的にも普及がすすみ、当院でもあらゆる消化器(胃、小腸、大腸、虫垂、胆嚢など)手術に応用しております。そうした中、鼠径ヘルニアについても腹腔鏡での手術が広まりつつあります。その利点としては①キズがお臍を含め1~2か所でどれも小さいため術後の痛みが少ないこと、②キズもほとんどわからなくなるので美容上も優れること、③鼠径部切開法に比べ鼠径部のツッパリ感や腫れが少ないこと、④お腹の中からヘルニア部分を直接観察できるので診断が確実で、弱くなっている筋肉を広くメッシュで覆うことができ再発が少ないこと、などが挙げられます。

    腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術について_図1腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術について_図2腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術について_図3
    写真1写真2写真3
     どのように手術を行うかというと、まず、臍を切開してポートと呼ばれる筒状の器具を装着し二酸化炭素でお腹を膨らませます。そしてお腹の中をカメラでみると、写真1のように鼠径部に穴があいているのがわかります。これが鼠径ヘルニアです。手術は、写真2のように直径5mmのカメラや器械を使います。次に、お腹の内側の腹膜という膜をはがし、補強に使う人工膜であるメッシュを入れる空間をつくります(写真3)。そしてメッシュを入れ(写真4)、生体吸収性の大きさが数mmほどの小さなスクリューで血管や神経などを避けて3~4か所固定します。腹膜を縫合して(写真5)手術は終了です。キズは吸収性の糸で形成外科的な縫合をしますので抜糸も必要がありませんし、写真6のように、縫った部分もほとんどわからなくなります。

    腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術について_図4腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術について_図5腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術について_図6
    写真4写真5写真6
     手術のために陰毛を剃る必要はなく、手術時間は1時間半前後で、従来法に比べて痛みも軽度で、翌日から今まで通り歩行や入浴もでき退院も可能です。当院では単孔式腹腔鏡手術で胆嚢摘出や虫垂切除を行っていますが(2010年5・6月号:宮垣拓也、単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術について-傷の無い手術を目指して-でも紹介いたしました。)、TAPP法でも可能なものは単孔式手術をしています。
     以前にお腹の手術をしている方、全身麻酔のかけられないご病気をお持ちの方などは腹腔鏡手術の適応でない場合があります。また、嵌頓(かんとん)状態といって腫れが急にかたくなって手で押さえても戻らない場合は緊急手術が必要になり、腹腔鏡手術は行えません。当院では毎週火・水・木曜日の午後にヘルニア外来を開設しています。鼠径ヘルニア(脱腸)でお悩みの患者様は、その患者様のヘルニアの状態、年齢、全身状態、既往症などにより、もっとも良いと思われる手術方法を提案させていただきますので、お気軽に御相談下さい。


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    直腸脱について

    (この記事は2011年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載する予定のものです)


    宮垣拓也 肛門外科 外科部長 宮垣拓也

     今回は、お尻の三大疾患であるイボ痔(痔核)・キレ痔(裂肛)・アナ痔(痔瘻)以外によく見られる、直腸脱のお話をさせて頂きます。高齢の方が多く住んでおられる地域柄、最近はこのような疾患にお悩みの患者様やそのご家族の方々が来院される機会が増えてきました。当科を「痔が出てるみたいなんです」「脱肛と思うのですが・・・」と受診され、お尻を診察させて頂くとびっくり、実は直腸脱だったというケースも稀ではありません。

     直腸脱とは、どんな病態をいうのでしょうか? 読んで字の如し、お尻から少し奥に入ったところの直腸が肛門の外側へ脱出する状態です。脱出した直腸が粘膜のみであれば不完全直腸脱、全層であれば完全直腸脱と呼びます。写真のように直腸が10cm近く飛び出してくる患者様(完全直腸脱)も珍しくありません。

    腹腔鏡による直腸脱の手術前と手術後写真
    直腸脱について_手術前直腸脱について_手術後
    手術前(直腸が10cm以上脱出している) 手術後(直腸はきれいに還納している)
     この疾患は乳幼児から高齢の方まで広く見られますが、先に述べましたように高齢の方、特に女性の方に多く見られます。その原因は、肛門の周りを取り囲んで支持している肛門括約筋や肛門挙筋などの筋肉が発育不全であったり、年齢を重ねるにつれて緩んできたりするなど色々言われておりますが、正確な病因・病態はまだ完全には解明されておりません。また、便失禁・尿失禁、子宮や膀胱の脱出を伴うことも少なからずあります。

     さてその治療ですが、いきみの禁止や緩下剤・浣腸などで排便コントロールすることで軽快する症状の軽い不完全直腸脱は別として、お薬だけで治療するのは難しく残念ながら多くの場合は手術が必要となってきます。その手術もヒポクラテスの時代から現在まで多くの記録があり、100種類以上の手術法が報告されております。

     その中で現在は、手術法がアプローチ法により大きく分けて2種類に分類されております。お尻側からアプローチする経会陰手術と、お腹側からアプローチする経腹手術です。前者はお腹を開ける必要がなく、脊椎麻酔(下半身麻酔)で施行される場合が多いため手術侵襲が少ない利点がありますが、再発(手術して一旦収まっていた直腸がまた脱出してくる)率がやや高い欠点があります。後者は全身麻酔が必要で、お腹を開けるため手術侵襲がやや大きくなる欠点がありますが、再発はほとんど認めないという大きな利点があります。ややこしくなるのでここでは詳しく述べませんが、前者には人の名前がついた多くの手術法(欧米ではほとんど行われていないですが日本では一番ポピュラーなガント・三輪・ティールシュ手術の他、デロルメ手術、アルテマイヤー手術など)があります。また、後者も同様に多数の手術法がありますが、基本的には脱出した直腸をお腹の中から剥離し吊り上げて固定する操作を行います。

    ガント・三輪・ティールシュ法(絞り染め式粘膜縫縮+肛門輪縮小術)・・・脱出した直腸粘膜・筋層を縫縮・短縮させた後、肛門周囲にテープ等を通し還納する。 直腸脱について_画像1

    脱出した直腸貫通結紮徐々に還納
    約4㎝脱出した直腸脱出した直腸粘膜・筋層を口側より順次貫通結紮し、縫縮していく(ガント・三輪法)縫縮された脱出直腸は、徐々に還納される
    貫通結紮徐々に還納
    ガント・三輪法終了後、肛門周囲皮下に全周性に太い糸を通し、肛門輪を縮小し、再発を防ぐ(ティールシュ法)手術終了時
     両者にはこのように、それぞれ利点・欠点があります。そこで両者の欠点を補うべく、手術侵襲がなるべく少なく、かつ再発率が低い手術法が考案されました。それが、腹腔鏡下直腸脱手術(直腸固定術)です。この方法は、従来お腹を10cm以上切開して行われていた手術を、腹腔鏡の補助下に行うためお腹には5mm前後の傷が3~4箇所しか残らず、整容性にも優れ、術後の痛みも軽度で体にかかる負担がかなり軽減されます。また、脱出した直腸の間膜をお腹の中で尾骨よりやや上の骨にしっかり固定するので、再発の心配もほとんどありません。当科ではメッシュなどの異物を使用せず、医療用のホッチキスを用いて短時間で簡便に手術を行うことで、なるべく体に負担がかからぬよう努力しております。
    腹腔鏡でお腹の中を見た術中写真
    直腸脱について_図2直腸脱について_図3直腸脱について_図4
    直腸が肛門外へ脱出している直腸を剥離し吊り上げる直腸を骨に固定する
     侵襲が軽いと言われていた従来の経会陰手術は、お尻の周りに傷がつくため思った以上に痛みがあったり、お尻の周りを安静に保つため術後すぐに食事が再開できない場合があったりしました。その点この手術は傷が小さく、お尻の周りには傷がつきませんのですぐに食事が再開でき、入院期間も短期間ですみます。唯一の欠点は全身麻酔が必要なため、心肺機能に全身麻酔に耐えられないような問題がある患者様には行えないことです。

     このような腹腔鏡手術の良さが認識されるにつれ、当科では脱出する直腸が長い例や再発例にしか行っていなかったこの手術を、最近ではそれ以外の症例でも積極的に行っております。われわれは以前より、虫垂炎・ヘルニア・胆石症や胃癌・大腸癌などに対して、積極的に腹腔鏡手術を導入してきました。また、前三者の良性疾患を中心に、当科で開発した特殊な道具を使った手術を行い、なるべく傷が目立たぬよう整容性にも留意しております(詳しくは当院のウェブサイトをご参照下さい)。このように蓄積されたノウハウを、直腸脱手術にも充分に応用しております。

     この疾患にかかられるのは高齢の方が多く、病気の場所が場所だけに恥ずかしく、命にも関わらないため仕方がないものと諦め、人知れず我慢している方が多いと思われます。ただ、お尻から腸が脱出していると下着と擦れて出血したり痛かったり、便が漏れたり出にくかったり、またトイレの度に脱出した直腸を戻してもすぐ出てきたりするので生活の質が著しく低下します。手術というとすごく大仰なことと思われるかもしれませんが、積年の悩みが一気に解決する可能性がありますので一度お気軽に当科を受診して下さい。

     当科では平成20年の肛門外来開設以来、痔核・裂肛・痔瘻中心に多数の患者様のご相談に対応してきました。お尻の病気は若い女性だけでなく、老若男女を問わずかなりデリケートな問題ですが、放っておくと重大なことになる可能性があります。恥ずかしいお気持ちは重々承知しておりますが、そのお気持ちを大切にして真摯に対応させて頂きます。今まで人知れず悩み、やっとの思いで当科を受診し治療を受け「今まで何年も悩んでいたのはなんだったのか?」と漏らされる患者様も多くおられます。直腸脱に限らず、お尻の問題でお困りの患者様・ご家族がいらっしゃいましたら、お気軽な気持ちで当科を受診して下さい。いつでもご相談に乗ります。


    肛門外来 受付時間:月曜日および金曜日の12:30から15:30まで

    ※肛門外来以外の午前・夜間診療でも受診可能です。

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